【Clair Obscur: Expedition 33】最終決戦でのマエルとルノワールの衝突、ヴェルソの決断(NG+プレイ記録11)
『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション33)』のニューゲーム+プレイ記録。
今回はルミエールでの最終決戦や、初見時に衝撃を受けたあの最後の選択肢をじっくり振り返っていく。
ストーリー全域のネタバレあり。
マエルとルノワールの主張
ACT3でのマエルの目的は、キャンバスを壊そうとする父ルノワールを止めること、そしてルミエールの住人を復活させることだ。
キャンバスの住人であるルネとシエルはマエルに協力し、ヴェルソは仲間の信頼を取り戻すために全力を尽くすということになっている。
ルミエールにいるルノワールはラスボスとして立ちふさがるが、マエル(アリシア)とルノワールはそれぞれ何を主張しているのだろうか。
まず、マエルはキャンバスに残りたいので、ルノワールがキャンバスを壊すのを止めたい。
ルノワールはアリシアが人生の新しい喜びを見つけることを望んでいるが、マエルは自分のせいでヴェルソが死んだ外の世界では喜びなど見つからないと反論する。
ヴェルソの魂が残るキャンバスでは、ヴェルソは描かれた存在として生きることができるし、マエルもキャンバスで失った大切な人たちを復活させて一緒に暮らすことができる。
それに対して、ルノワールはキャンバスの危険性を理解しており、家族を守るためにキャンバスを壊したい。
キャンバスは魅力的で中毒性があり、かつてルノワールはキャンバスに夢中になって死にかけたことがあるという。
ルノワールもヴェルソの魂の最後の欠片が残るキャンバスを壊したくはない。
しかし、アリーンがキャンバスで長時間過ごした影響でゾンビのようになっていることが戦闘後に判明する。
ヴェルソのキャンバスがある限りアリーンは戻りたがるだろうし、アリシアもアリーンのようになりかねないことをルノワールは危惧している。
また、ヴェルソの死で家族が崩壊し、アリシアにも深く暗い影を落としている中、アリシアがキャンバスにこだわることは、アリシアがいつまでもヴェルソの死から前に進めないことでもある。
これ以上家族から犠牲を出さず、そして家族がヴェルソの死を受け入れるためには、キャンバスを壊すしかないというのがルノワールの考えだ。
外の世界のデサンドル家の事情までは知らないシエルは、ルノワールが悲しみで目がくらんで取り返しのつかない選択をしようとしていると考え、ルネは親の選択でマエルの人生を決めてしまうことを批判する。
ルノワールはふたりの意見も重々理解しており、たとえアリシアに憎まれてもなお家族のために最善の選択をしようとする。
キャンバスをめぐるマエルとルノワールの考えは折り合わず、最終決戦に突入する。
ラスボス戦でのルノワールの訴え
初見時はスタンダールでワンパン終了したラスボス戦だったが、NG+でも普通にスキルを使うと1ターンで終了するので、どんな演出があるのかを見てから倒すことにした。
ルノワールのうしろにはシレーヌ、ヴィサージュ、リーチャー、ハウラーのアクソン4体がおり、ルノワールを支援する。
戦いの中でもルノワールは、「状況を自分の望むようにではなく、あるがまま受け入れろ」とアリシアを諭す。
つらい現実から目を逸らし、居心地のいい場所から抜け出そうとしないアリシアを、ルノワールは的確に捉えている。
1戦目を終えると、キャンバスを守るためにアリーンが乱入する。
ペイントレスに姿を変え、シレーヌを足止めするアリーン。
その姿を、ヴェルソは複雑な表情で見上げている。
プレイヤーとしても、あんなに苦労してアリーンをキャンバスから追い出したのに、こんなにあっさり戻って来るのか、とか、アリシアが屋敷のどこかに隠したキャンバスは、アリーンにあっさり見つかったのだな、とか、いろいろと思うところがある。
2戦目では、ルノワールとアリーンの言い争う様子が見られる。
ルノワールを追い出してキャンバスを守りたいアリーンに対し、ルノワールはキャンバスを残せばアリーンだけでなくアリシアにも危険が及ぶことを切実に訴える。
キャンバスで過ごす日々には代償が伴う。
その事実を、キャンバスで死にかけたルノワールに叩き込んだのがアリーンだったというのは、戦闘後にルノワールが語る話だ。
だからこそルノワールはアリーンの教えを忠実に守ると同時に、誰よりもキャンバスの危険を熟知していたはずのアリーンが悲しみのあまりキャンバスに固執する姿を見るのがつらく悲しいのだろうと想像する。
ちなみに、2戦目ではルノワールが空を飛び回る場面があり、そこで身につけている羽はリーチャーのオルフランが作っていたものと同じデザインだ。
マエルの嘘、ヴェルソの決断
戦闘が終わっても、キャンバスを壊すかどうかの結論は出ない。
ルノワールがこれ以上家族を失いたくないという気持ちは、マエルにとってキャンバスの住人を失いたくないという気持ちと同じ。
マエルはキャンバスも父親も失いたくないから、「あと少しだけ」と言ってルノワールからキャンバスに残る許可を得る。
ヴェルソはマエルが嘘をついたと見抜き、ルノワールもまた、アリシアがキャンバスにずっと残り続けるつもりでいることを分かっている。
「父さんはわたしに弱い」をアリシアが利用した形だ。
アリシアは、これまでも父親に嘘をついて自分に都合のよい状況を作ってきたと思わせる会話だ。
一部始終を見ていたヴェルソは、何を考えていたのだろう。
外の世界のアリーンの姿が映し出された時、ヴェルソは動揺していた。
キャンバスに留まり続け、生ける屍となった母親の姿にショックを受けたのかもしれない。
それだけでなく、キャンバスがもたらす画家への影響を知り、マエルもいずれこのようになることをヴェルソは察知したはずだ。
本物のヴェルソが命と引き換えにアリシアを救ったのに、ヴェルソの死によってアリシアが命を削っているという事実。
これでは何のためにヴェルソがアリシアを助けたのか分からない。
それに、絵の中のヴェルソにとってマエルは本物の妹ではないにせよ、ヴェルソの本質を受け継いで描かれたヴェルソが、「妹」が死んでいくのを放置できるだろうか。
外の世界では、ヴェルソの死によってデサンドル家が崩壊している。
私たちは本物のヴェルソを知らないし、絵の中のヴェルソも自分の気持ちをほとんど言わないため、ヴェルソの真意は分からない。
ただ、ヴェルソは親の期待に応えるために音楽より絵を優先したり、妹を助けるために命を失ったり、基本的に自分を犠牲にして家族に尽くす人物だった。
クレアはヴェルソがそういう性格だと分かっているから、絵の中のヴェルソに協力を求めたのだろう。
アリーンをキャンバスから追い出したり、マエルを見守ったりといったことは、すべて本物のデサンドル家の利益になる。
だからこそヴェルソは偽ルノワールと敵対し、偽アリシアに距離を置かれていた。
そして今、ヴェルソは人生に疲れて消えたい。
何も言わずにヴェルソは、キャンバスを消しに行く。
マエルとヴェルソの対立
キャンバスを保っているのは、少年の姿をしたヴェルソの魂の欠片だった。
各地にいた幼い少年である。
少年にとってキャンバスの中の生き物は、エスキエもジェストラルもグランディスもアリーンの創造物も、すべて命あるもの。
少年は彼らを消したくはないが、父ルノワールが家族のためにキャンバスを破壊しようとしていることも理解している。
ルミエールの幼い少年は、キャンバスを描き続けるかどうか迷っていた。
描き続けろと言われれば描き続けるし、描くのをやめろと言われればやめる。そのような心境だったのだろう。
そんな少年にヴェルソは、描くのをやめようと呼びかける。
しかし、キャンバスに残りたいマエルが止めに入る。
マエルがキャンバスに居続ければ、命を削っていくことになるとヴェルソは分かっている。
キャンバスを出て、戻りたいときに戻ってくればいいとヴェルソはマエルに伝えるが、マエルがキャンバスを出ればルノワールは即座にキャンバスを消すからマエルは出たくない。
「きみにキャンバスは必要ない」とヴェルソはマエルに伝えるが、外の人生は声も未来もない孤独なもので、自分は存在するだけで、望むものは全部キャンバスにあるとマエルは返す。
ACT3に入ったときから、ヴェルソとマエルの考えには相違があった。
それが顕在化し、プレイヤーはマエルを選んでキャンバスを残すか、ヴェルソを選んでキャンバスを消すかの選択を迫られる。
マエルとヴェルソの運命がぶつかり合う
キャンバスの運命をかけて、マエルとヴェルソの戦闘になる。
戦闘中もふたりの会話は続く。
1ターン目。
2ターン目。
3ターン目。
キャンバスを消すことは、ルネやシエル、モノコ、エスキエの死を意味する。
「そんなのみんなのためじゃない」とマエルは訴えるが、マエルがキャンバスを残したいのは自分のためだし、同じくヴェルソも自分のためにキャンバスを消したいと考えている。
ヴェルソは「人生は残酷な選択を強い続ける」というルノワールの言葉を受け止め、今ここでキャンバスの運命を決める決心をしている。
一方でマエルは、自分の望むように状況を見る傾向にあり、重要な話から目を逸らし「もう疲れた」と言って大事な決断を先延ばしにしようとしている。
物事を甘く捉えがちで、目先の居心地のよさを優先しがちなマエルの性格が垣間見える会話だ。
Our Drafts Collides(アワー・ドラフツ・コライド)
戦闘中に流れる曲は「Our Drafts Collides」。
戦闘終了時にもらえるレコード「アワー・ドラフツ・コライド」だが、直訳は「私たちの下書きがぶつかり合う」となる。
「下書き」はおそらく様々なものを表していて、価値観、未完成の人生、描き直しが可能な運命といったものの象徴なのかなと思う。
そんなマエルとヴェルソの「下書き」がぶつかり合い、「別れの時が来た また次の人生で」の歌詞が、相容れないふたりの人生を確信させる。
ちなみに、「Our Drafts Collides」と旋律を共有しているのが「Our Drafts Unite」というチュートリアル戦闘で流れていた曲。
「私たちの下書きがひとつになる」と直訳できるこの曲は、ペイントレスを倒すという共通の目的があった第33遠征隊の合流・運命の結びつきを象徴するかのようだった。
同じ旋律を持ちながら、調和と対立という真逆の状況で使われるこれらの曲は、『Clair Obscur: Expedition 33』の数ある音楽の中でも特に印象に残る曲となっている。
私もこのチュートリアルの曲はとても好きです。
通常のサントラではなく「Cast Reveal Edition」という別バージョンに収録されているのが憎い。
通常版:Clair Obscur: Expedition 33 (Original Soundtrack) ←154曲収録のサントラ
別版:Clair Obscur: Expedition 33 (Original Soundtrack) Cast Reveal Edition」 ←5曲収録のミニアルバム
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1周目クリア時点でどっちも買った。
長くなったので、エンディングについては次の記事に書きます。
- ニューゲーム+でプロローグをじっくり見ていく
- 白いネヴロンの正体とジェストラルが戦い好きな理由
- マエルの悪夢と序盤キャンプイベントのニッチな深堀り
- 岩波の崖の祭壇やACT1クライマックスをじっくり見ていく
- 忘れ去られた戦場で描かれるキャラクターたちの心理
- モノコがいかにアレかという話や旧ルミエールのアクソン考察
- なぜシエルとルネはアクソンに屈しなかったのか
- モノリスのルノワール戦とペイントレス戦を振り返る
- エピローグの屋敷を散策し、姉妹の会話を振り返る
- リーチャーに込めたルノワールのアリシアへの希望
- 最終決戦でのマエルとルノワールの衝突、ヴェルソの決断