【Clair Obscur: Expedition 33】忘れ去られた戦場で描かれるキャラクターたちの心理(NG+プレイ記録5)
『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション33)』のニューゲーム+プレイ記録。
初見では気づかなかったあれこれを書いているので、ひと通りクリアしてストーリーを再確認したい方や、NG+プレイ中の独り言を読みたい方におすすめです。
今回の内容は忘れ去られた戦場の感想中心。
ストーリー全域のネタバレあり。
前回:岩波の崖の祭壇やACT1クライマックスをじっくり見ていく
無益な時間を嘆くクレア
NG+でヴェルソの特性とスキルが全部リセットされていて「なんでや」と思いつつ、忘れ去られた戦場へ。
デュアリステにやられた大量の遠征隊の死体を眺めながら、 消えゆく女ことクレアと会話する。
マエルを先頭にしているときのみ会話できる、なんて知らず1周目では完全スルーしていたこの会話。
クレアはマエルが自分のことを覚えていなくてガッカリ。
ヴェルソの敵討ちのためにやることがたくさんあるのに、両親はキャンバスの中で喧嘩中、妹は記憶がない。
まあ、妹は作家との件に関わらないほうがいいからキャンバスで遊んでて。
そんな感じの内容。
キャンバスの外でもっと大事なことがあるのに、家族の誰も手伝ってくれない。家族をまとめているヒマもない。
だからクレアはひとりで対処している。そんな実態が垣間見える会話だった。
それはきっとアリシアの気持ち
デュアリステ戦前のカットシーンで、元気がないマエルにアリシアを重ねてみる。
マエルは遠征隊の大量の死体を見て「どこへ行っても死だけ。わたしはそんなのもう見たくない」と言い、ヴェルソには「あなたは分かってくれると思ってた」と言い、ルネとシエルには「ギュスターヴが死んだのに、よくなんでもない顔で進めるね」と突っかかる。
ギュスターヴの死をどう受け止めればいいか分からず落ち着かないマエルの姿は、ヴェルソを失った当時の、しゃべれないアリシアの心理を代弁しているように見える。
「わたしはヴェルソの死と向き合いたくない」「ヴェルソが死んだのに、よく作家との争いのことなんて考えられるね」と。
アリシアの母は現実逃避し、父はこれ以上家族の犠牲を出さないために母を追いかけ、姉は悲しみを怒りに変えてやるべきことを優先している。
シエルがマエルに「あたしたちは進み続けなきゃならない。やるべきことは分かってるでしょ」と諭すが、これはクレアがアリシアに言ってもおかしくない言葉だ。
アリシアだって、作家との問題を解決しなければならないのは分かっているはずだが、家族の誰とも悲しみを共有できないのがつらかったのではないかと思う。
ましてや事故の後遺症で、自分の気持ちを言葉にできない状態だったのだから。
しかし、マエルがヴェルソに「周りの人を見送りながら永遠の命を生きていて嫌にならないの?」と聞くのは残酷だ。
現実世界のヴェルソがアリシアを守って死んだことで、目の前のヴェルソは描かれた生を与えられた。
絵の中に家族はいるものの、現実世界の両親がキャンバスで衝突し、絵の中の人々がこうして何人も何人も死んでいる。
嫌にならないわけがない、と考えるのが自然だろう。
埋葬シーンでの各キャラクターの心理
デュアリステを倒し、ギュスターヴ埋葬シーンへ。
マエル、ルネ、シエルから少し離れた場所でヴェルソが見つめていたのは、ゼロの数字が描かれた腕章だった。
ジュリーを含む第0遠征隊に裏切られたあと、ヴェルソは彼らを殺し、ここに埋葬したのだろう。
マエルの悪夢で見たあの現場は、ヴェルソとジュリーのジャーナルの場所からも分かるとおり、忘れ去られた戦場のすぐそばだ。
もちろん今ここでヴェルソは「俺もここに大事な人を埋葬した」とは言わないが、直後のキャンプでエスキエに「ジュリーのことを考えていたのか?」と問われている(答えは「ジュリーのことだけではないが」だった)。
マエルはギュスターヴの墓に向かって「あなたは最高の兄」「家族になってくれてありがとう」と語りかける。
これは、生きているうちにギュスターヴに伝えられなかった言葉であると同時に、アリシアがヴェルソに伝えられなかった言葉でもある。
シエルは広がる空を見上げながら、いつも寄り添ってくれたギュスターヴに思いを馳せる。
夫を亡くしたとき、死にたくなったとき、海で死のうとして助かったとき、お腹の子を失ったときなど、シエルのつらいときには親友のソフィーとギュスターヴがいつもそばにいたのかもしれない。
ルネはギュスターヴをねぎらいながら、「仲間を失っても、私たちは進む」と思いを新たにする。
ルネにとってこの場所は、ただギュスターヴを埋葬するだけの場所ではない。
周囲に掲げられたたくさんの腕章の中には、46と書かれたものが数多く存在する。
第46遠征隊は、ルネの両親が所属していた遠征隊だ。
ルネの両親がここに埋葬されているかどうかは分からないが、46の数字を見てルネが両親のことを思い出さないはずがない。
このシーンは、ルネにとっては両親の墓参りでもある。
(なお、ルネの母親の死亡場所はシレーヌの島だと後に分かるが、父親は不明)
「仲間を失っても、私たちは進む」は、ギュスターヴだけではなく、ルネの両親、さらにはルネの姉と兄にも向けられた言葉だろう。
そしてそれは、必ず遠征を成功させるというルネの強い決意を表している。
2周目で見るギュスターヴの埋葬は、ギュスターヴを弔うだけのイベントではなく、マエルとアリシアのつながりや、ルネの両親のことなど、いろいろな方向に想像が広がる意味深いものだった。
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