【Clair Obscur: Expedition 33】悲しみの受容へ。エンディング解釈と感想(NG+プレイ記録12)

クレールオブスキュールエクスペディション33 エンディング 考察感想

『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション33)』のニューゲーム+プレイ記録。

今回はエンディングについての感想・考察なので、ひとつの解釈として読んでもらえればと思う。

2周プレイしての私の結論は、どちらのエンディングも完成されていて、納得できるものだということだ。

ストーリー全域のネタバレあり。

前回:最終決戦でのマエルとルノワールの衝突、ヴェルソの決断

マエルエンド:ヴェルソの本質を描けたのか?

まずはマエルのエンディングについて。

ヴェルソの抹消

マエルとしてヴェルソに勝利すると、ヴェルソは「こんな人生は嫌だ」と言ってマエルに抹消を求める。

クレールオブスキュールエクスペディション33 画像

マエルがキャンバスを残すと決めた以上、不死のヴェルソを死なせることができるのはマエルしかいない。

ヴェルソの願いを受け入れ、マエルはヴェルソを抹消する。

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「あなたがもし年を取ることができたなら、見つかるかな? 笑う理由が」というマエルの言葉で始まるのがエンディング「絵を描く人生」だ。

エピローグ「絵を描く人生」

マエルによって甦ったルミエールの人々。

ギュスターヴとソフィー、シエルの夫…

みんな笑顔で幸せそうだが、なんともいえないぎこちなさがあるような、ないような。

そこはアリシアとアリーンの、画家としての実力差なのかもしれない。


ヴェルソと一緒に生きたいマエルは、キャンバスにヴェルソを描いた。

オペラハウスでピアノを弾く老けたヴェルソに、マエルが望んだ笑顔はない。

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マエルの創ったヴェルソは、アリシアの記憶にある本物のヴェルソと、アリーンの描いたヴェルソが混ざったような存在かもしれない。

絵は本物に見えるものを描くのではなく、本質を描くことだと、キャンプでヴェルソは話していた。

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キャンプでの会話

果たしてマエルは、ヴェルソの本質を描けたのだろうか。

本物のヴェルソは、自分を犠牲にして妹アリシアを助けた。

アリーンの描いたヴェルソも、マエルをキャンバスから追い出すことでマエルを救おうとした。

たとえ年を取ったとしても、ピアノの道に進んだとしても、キャンバスに留まって身を滅ぼしてゆく妹を見て、ヴェルソは笑顔になれるだろうか。

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ルノワールが去り、キャンバスから抹消はなくなった。

しかしルノワールがマエルの死を許すはずがなく、いずれまたキャンバスに戻りマエルを連れ戻そうとするだろう。

マエルとルノワールが衝突すれば、再び崩壊が起こるかもしれない。そうヴェルソは危惧していた。

本当に壊さないといけない輪廻は抹消ではなく、デサンドル家の悲しみの連鎖だと考えていたヴェルソと、キャンバスにずっと残りたいマエルの幸せが両立するのは難しいように思う。

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キャンプでの会話


ところで、マエルと一緒にオペラハウスの客席に入ってきた少年について触れておきたい。

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私は最初、この子はギュスターヴの弟子だと思っていたが、とある海外動画によると顔立ちが微妙に違うようで、投稿主は「ヴェルソとルネの子供なのではないか?」という説を立てていた。

たしかに少年と親しげに接するルネの様子を見ると、そうかもしれないという感じがしてくる。

ヴェルソエンド:キャンバスの終わり

続いてヴェルソのエンディングについて。

キャンバスの消滅、ヴェルソの願い

アリーンにしたのと同じように、ヴェルソはマエルを倒してキャンバスから追い出す。

「きみには素晴らしい絵の才能がある」「きみは大丈夫」と声をかけながら、マエルを送り出す。

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エスキエとモノコに別れを告げ、シエルに「まあ分かるけどさ」と言いたげな顔をされ、ルネに「この大嘘つき野郎め」という顔をされ、ヴェルソは魂と共に消えていく。

建前上、ACT3のヴェルソはシエルの夫を復活させるため、ルネの信頼を取り戻すため、という目的で行動していたので、ヴェルソはふたりを裏切っただけでなく、何の相談もなくふたりの人生を終わらせたことになる。

つらい別れを乗り越えてでも、仲間に嫌われてでも、苦しみから解放されたいという自己の利益のためにキャンバスを犠牲にした。

自分より家族を優先するヴェルソの、最初で最後のわがままだったように見える一方で、やはりヴェルソは家族のために行動していたと考えることもできる。

キャンバスを消すことは、キャンバスに蝕まれるアリシアを救うことでもあった。

本物のヴェルソと同じように、絵の中のヴェルソも命と引き換えに妹を守ったのだ。

「ヴェルソなら自分のキャンバスが消えることを絶対に望まない」とマエルは言っていたが、キャンバスが残ることで妹の命が危険にさらされるなら、ヴェルソは迷わずキャンバスを消すのではないだろうか。

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ACT3開始直後の会話

同時に、ヴェルソがキャンバスを消すことは、ヴェルソの死で崩壊した家族に対し、真実を受け入れて前に進んでほしいという願いが込められているように思う。

キャンバスと共に最後まで残っていたヴェルソの魂の欠片が消え、ようやくヴェルソは真に安らかに眠ることができる。

エピローグ「愛のある人生」

屋敷の庭でヴェルソの墓を囲み、ヴェルソを弔うデサンドル家。

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アリーンは庭を歩けるまでに回復し、彼女もアリシアもヴェルソの墓を直視できるほど、現実を受け入れたことを示唆している。

クレールオブスキュールエクスペディション33 画像
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エスキエのぬいぐるみを抱いたアリシアは、手を振って消えていく仲間たちの姿を見送る。

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これはアリシアのキャンバス世界への未練にも見えるし、アリシアがキャンバス世界と決別したと考えることもできるが、消えた仲間たちの中にマエルがいることから、アリシアがヴェルソのキャンバスに別れを告げたと解釈したい。

大切な人の死を受け止め、その愛に感謝し、その人の意思を継ぐ。

アリシアにはそれができるはず。マエルがギュスターヴの墓で体験したことだから。

関連記事:忘れ去られた戦場で描かれるキャラクターたちの心理

ヴェルソやルノワールが期待しているとおり、アリシアに絵の才能があるのなら、アリシアは自分で新しい世界を描いて、新しい喜びを見つけて、羽ばたくことができるだろう。

悲しみの5段階で見るデサンドル家

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デサンドル家の状況をつかむのに参考になるのは、悲しみの5段階という考え方だ(RedditやYouTubeのコメントで見て知った)。

悲しみの5段階は、大きな喪失に直面した人々の心の動きを説明するために用いられる。

▼悲しみの5段階

  1. 否認(Denial):「そんなはずはない」「夢であってほしい」と現実を受け入れられず、拒否する段階
  2. 怒り(Anger):「なぜ自分がこんな目に」「どうしてあの人が」など、怒りや不公平感が湧く段階
  3. 取引(Bargaining):「もし○○できたら元に戻るかも」と願ったり、神や運命に取引を持ちかけるような気持ちになる段階
  4. 抑うつ(Depression):深い悲しみや絶望を実感する段階。無力感、喪失感に圧倒され、気力を失うことも多い
  5. 受容(Acceptance):「現実は変えられない」と理解し、静かに受け入れていく段階。決して悲しくなくなるわけではないが、心の中で整理がついて、前を向けるようになる

この5段階は必ず順番どおりに進むわけではなく、行き来したりスキップしたりすることもある。

デサンドル家の5人はそれぞれの悲しみの段階を表現しているとされ、「これが正解」という考え方はないものの、おおむね以下のようになる。

  • アリーン=否認:息子の死を受け入れられず、現実から逃避して真実に向き合えない
  • クレア=怒り:弟を失った悲しみよりも、作家への怒りや家族への不満が勝っている
  • マエル=取引:「もう少しだけ」と言ってルノワールに取引を持ちかけ、兄の死を回避しようとしている
  • ヴェルソ=抑うつ:疲れ果て、永遠の苦しみを終わらせたい
  • ルノワール=受容:「状況を自分の望むようにではなく、あるがまま受け入れろ」の言葉どおり、真実と向き合って残された家族と生きていこうとする

(アリーン=取引、マエル=否認、ルノワール=取引・抑うつ、ヴェルソ=受容という見方もある)

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ヴェルソエンドとは、行動も悲しみの段階もバラバラだったデサンドル家が、ヴェルソの「安らかに眠らせてほしい」という願いを受け入れ、静かに受容の段階に移行していく姿を描いたものと考えることができる。

所感

1周目では「疲れたヴェルソを休ませるエンディングのほうが好きだな」くらいの感想だった。

だが、NG+で同じエンディングを見たら、このふたつのエンディングは必然であり、完成されたものなのだと思うようになった。

たとえ何度キャンバスを残す選択をしても、いずれはあのヴェルソエンドに至り、デサンドル家がヴェルソの死を受け入れて前に進もうとする結末に行き着くのだ。

少なくとも、ゲーム中で得られる情報から考えていくとそうなる。あくまで私の解釈だけれど。

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マエルエンドは、思い入れのあるキャラクターたちといつまでも一緒にいたいという、私たちプレイヤーの願いを映し出したものでもある。

キャンバスが残り、ヴェルソもマエルも幸せな理想のエンディングを求めるのは、「このゲームを終わらせたくない」「いつまでも遊んでいたい」「続編が出るかもしれない」という希望の表れのように感じる。

マエルと同じように、プレイヤーも『Clair Obscur: Expedition 33』というキャンバスの中で心地よく楽しく現実逃避している。ゲームもキャンバスと同じように、深い愛着を持って長い時間のめり込めば精神に影響を及ぼすおそれがある。

そうしたメタ的な視点からも解釈できる作品だ。

3周目を始めればまた新たな発見がありそうだが、どちらのエンディングも納得のいくものだという結論に達したので、あとはまだ書けていない細かなあれこれをまとめてこのゲームを終わりにしようと思う。

続き

ナントカ33 感想

冷たい完璧主義者に見えるクレアの本当の姿とは|エクスペディション33

『クレール・オブスキュール:エクスペディション33』NG+感想・考察

エクスペディション33 NG+記録
  1. ニューゲーム+でプロローグをじっくり見ていく
  2. 白いネヴロンの正体とジェストラルが戦い好きな理由
  3. マエルの悪夢と序盤キャンプイベントのニッチな深堀り
  4. 岩波の崖の祭壇やACT1クライマックスをじっくり見ていく
  5. 忘れ去られた戦場で描かれるキャラクターたちの心理
  6. モノコがいかにアレかという話や旧ルミエールのアクソン考察
  7. なぜシエルとルネはアクソンに屈しなかったのか
  8. モノリスのルノワール戦とペイントレス戦を振り返る
  9. エピローグの屋敷を散策し、姉妹の会話を振り返る
  10. リーチャーに込めたルノワールのアリシアへの希望
  11. 最終決戦でのマエルとルノワールの衝突、ヴェルソの決断
  12. 悲しみの受容へ。エンディング解釈と感想

その他:

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