【Clair Obscur: Expedition 33】冷たい完璧主義者に見えるクレアの本当の姿とは
『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション33)』のニューゲーム+クリア後の雑感。
冷たい印象を持たれがちなクレアのことを、ゲーム内の情報から分かる範囲で掘り下げてみた。
ストーリー全域のネタバレあり。
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クレアについて分かっていること
会話やジャーナルなど、ゲーム中で分かるクレアのことは以下。
▼幼少期
- デサンドル家の長女。ヴェルソとアリシアの姉
- 幼い頃から絵画や彫刻で才能を発揮
- 子どもの頃、一生かけても世界中のすべての作品を鑑賞しきれないという理由で死ぬ運命を悲しんでいた
- キャンバスの世界をヴェルソと創り、エスキエやフランソワと4人で遊んでいた
▼ヴェルソの死後
- ヴェルソの死を重く受け止めている
- 家族がヴェルソの死でゴタゴタしているので、作家とひとりで戦っている。本当は手伝ってもらいたい
- 絵の中のデサンドル家を不愉快に感じている
▼キャンバスの中
- ヴェルソとルノワール以外の第0遠征隊の隊員を皆殺しにした
- ネヴロンの創造主(アクソンの島にいるものはルノワール作)
- ヴェルソに真実を話し、協力を求めた
- 偽クレアをさらって上書きし、遠征隊を倒すネヴロン製造機にし、遠征隊のクロマがペイントレスに流れるのを防ぐという形でルノワールに協力した
- 偽クレアの恋人だった第0遠征隊のシモンをそそのかし、アクソン1体を倒させ、アリーンも倒してもらおうとした(が失敗。アリーンの話を聞いたシモンはルノワールを倒すためモノリスの地下へ行く)
- マエルが誕生したとき、ヴェルソにマエルを見守るよう頼んだ
幼い少年の語る姉
幼い少年(ヴェルソの魂)が語るのは姉との楽しい思い出が多いが、そうでないものも混じっている。
落つる葉の少年は、姉の絵がなぜ遠征隊の命を奪うのか知りたがった。
その理由は、ヴェルソとクレアの創ったものに敬意を払うため。
クレアがネヴロンを創らせているのはルノワールを助けるためだが、その心の奥では、弟と一緒に創ったキャンバスにアリーンの創造物が存在することを否定している。
すべての絵は祝福であるべきと考えるヴェルソの魂は、姉の意図にショックを受ける。
「彼女の絵がこれ以上命を奪うのを止めて」という少年の願いを叶えると、少年がレコード「Until Next Life(アンティル・ネクストライフ)」をくれる。
昔、クレアがよく演奏してくれた曲だという。
「足跡を残さない男 涙のような声の男 記憶が消えていく男 時のリズムに逆らう男」の歌詞がヴェルソを見事に表現している。
なお、キャンプで聞けるレコードは女性ボーカルだけの歌だが、サントラではゲストボーカルにBen Starrが参加していて、要するにヴェルソが一緒に歌っている。
エスキエの「お前の声は本当に素敵だ」というセリフを裏付けし、心の結界がバリアブレイカーされるような歌声が聞ける。
ヴェルソとクレアは仲が良かったことが分かる一方で、アトリエでは不穏な空気が漂っている。
クレアの描いた恐怖が少年を眠らせないのだという。
「嫉妬が歪み、愛が目をくらませる」という少年の言葉や、アリーンがヴェルソの死から立ち直れないのを見ると、アリーンはヴェルソ贔屓だった可能性がある。
少なからずクレアは嫉妬心を抱いていたのだろうと想像する。
フランソワとの関係
エスキエのお隣さんであるフランソワは、クレアの創造物だと思われる。
昔は4人でよく遊んでいて、フランソワとクレアはいつも歌っているほど仲が良かったが、フランソワはずっとクレアを待ち続け、歌うのをやめてしまった、とエスキエは語る。
エスキエとの親密度イベントで、エスキエはフランソワと岩を交換するためにフランソワとクレアを模した岩を作成。
このクレアは満面の笑顔でフランソワと一緒にいる。
「何世紀も過ぎたが二人は親友」と考えるエスキエの記憶がそのまま再現されたものなのだろう。
岩を交換したフランソワは最初は怒っていたものの、エスキエとヴェルソが去るときにはむせび泣き、ヴェルソに「本当にクレアが恋しいんだな」と言われる。
ここで流れているBGMはクレアのテーマ曲のアレンジで、クレアとフランソワのつながりをそっと表現している。
フランソワのいつも怒っているように見える様子も、どことなくクレアを感じさせる。
終わりなき塔の会話
終わりなき塔の消えゆく女=クレアの会話内容と、そこから考えられること。
▼試練クリア前
- あなたがアリーンをキャンバスから追い出すことに成功して驚いた
- ドッペルゲンガー(ヴェルソ)があなたを計画に引き込んだのも予想外だった
- あとはルノワールがキャンバスを消せばOK。必要なことだと分かってるでしょ?
- わたしはヴェルソと一緒にこの世界の半分を描き、あなたが部屋で本を読んでいる間、ヴェルソとキャンバスで冒険をしていた
- アリーンやあなたがキャンバスに残りたいなら構わないが、ルノワールには外で戦いを手伝ってもらいたいから、キャンバスで時間をムダにされては困る
- (試練を断ると)あなたは臆病で1日中ふさぎこんで、一緒に遊ぶ友だちがいないと嘆くくせに、誘っても断るんだから付き合ってられない
▼試練クリア後
- 両親が自分たちの悲しみに向き合うまで面倒事は終わらない。両親の喧嘩を自分事にしないように
- アリーンは現実に向き合うよりも、見せかけの世界に没頭していて、依存していて、手放そうとしない。あなたはアリーンの妄想に囚われているから、同じ間違いをしないでほしい
- ルノワールは家族をまた失うことを恐れていて、家族全員を自分の意思に従わせようとしている。ルノワールの恐怖に支配されないように
- 最後に会ってから、あなたは大きく成長した(最後に会った時=屋敷のシーン)
- あなたが自分の選択をするのは自分勝手なことではない。過去を振り返らず、自分の人生は自分のものだと忘れず、人生を楽しんで生きて
クレアはヴェルソのキャンバスを消すのは必要なことだと言い切る。
ただ、クレアがキャンバスで過ごした時間や、ヴェルソと一緒に過ごした時間はアリシアより長いという事実がある。
本当は「私のほうがあなたよりキャンバスに思い入れがあるけど必要なことだからやるの」と言いたいのだと想像。
もしアリーンがヴェルソのキャンバスに引きこもらず、ルノワールがアリーンにかかりっきりにならなかったのなら、キャンバスを残す選択肢もあったのかも。
(が、ストーリー上そうはならなかった)
ルノワールのことを、家族を失う恐怖で動いているという視点で見ているのも印象的。
クレアは、アリシアがマエルとして生きても構わないと考えている。
しかしクレアは、描かれたヴェルソをドッペルゲンガーと呼び、本物と明確に区別し、そこに依存することを厳しい目で見ている。
終わりなき塔の報酬は、マエルのポニーテールの白髪バージョン。それを「自分の人生は自分のものだと思い出させてくれる」という言葉とともにくれる。
クレアはアリシアに対して怒っている部分もある。これまでのアリシアのネガティブな態度や、アリシアが作家に付け入られてヴェルソが死んだことなど。
長女として責任を負って様々なことを我慢してきたぶん、妹には家族の抱えている問題にとらわれず自由に好きに生きてほしいという願いがあるのかもしれない。
白いネヴロンから見えるクレア
各地にいる白いネヴロンはクレアの創造物だが、彼らの言葉からクレアについて想像できることを挙げてみたい。
▼赤の林 ベニスール
「人によって創られた心は、偽物とみなさなければならないのか?」
画家の創造物の心は本物なのか、偽物なのか、という疑問を呈している。
クレアは基本的に創造物に対して容赦ないが、決して創造物の心が偽物だと考えているわけではない。
その答えはとても複雑で、考えても考えても答えが出ないという立場なのだ。
▼岩波の崖 エクスギャ
クレアは愛情を込め、誇りと配慮を持って白いネヴロンを創造した。
しかし、クレアでも不完全な創造物を創ることがある。エクスギャはその生きた証であり、「彼女でも過ちを犯すことがある」と表現し、気まずそうにする。
不完全=過ちと見なしている。
▼石切り場 トルバドゥール
ネヴロンたちはクロマを求める者たちを否定するため、殺すことになっている。
遠征隊のクロマがアリーンに戻らないようにするためでなく、存在自体を否定しているクレアの本音だ。
▼深遠の廃墟 ポルティエ
弱いままでは存在してはいけないかのような物言いをするが、無防備ではなくなった途端、自身を取り戻し務めを思い出す。
弱さは許されない。強くなければ目的を果たせない。そんな考えがにじむ。
▼噴水 ブランシュ
白いネヴロンはクレアと同じように、ルノワールとアリーンの衝突を早く解決するのが務めだった。
ブランシュにだけは、主の未完成で不完全な創造物たちを消す責務も与えられていた。
完璧でない存在はクレアの失敗の証となるからだ。
しかしブランシュは同胞を消すことができず、自らも不完全であると悟り、そんな「不完全な私たち」を救った第33遠征隊に感謝する。
創造主であるクレアもまた、自分が不完全でないことを認識していることを示唆している。
空飛ぶ屋敷の偽クレア
空飛ぶ屋敷はクレアが偽クレアを拉致して監禁した場所だが、昔はクレア本人が住んでいた場所らしい。
偽クレアはクレアに描き直され、ネヴロンを永遠に描き続けている。
このクレアはヴェルソの実の姉にあたるが、姿を見るのはたぶん66年ぶりくらいになるだろう。
マエルいわく、他人の作品を描き直せるのは才能のあるクレアにしかできないこと。
アリーンの創ったクレアが気に入らないため、本物のクレアがアリーンの創ったクレアを上書きしてクレアに都合のいいように利用している(ややこしい)。
戦いのあとに弟の顔を見たクレアは、苦しみから逃れるため、自分の創ったネヴロンの手で死ぬことを選ぶ。
不完全を許さないクレアにとって、自分の意志に反することをやらされ続けることや、元の「完璧な」自分には戻れないことは、死んだほうがマシなほどつらいことだったのだ。
クレアについて想像できること
クレアは冷たい人なのではないか、という印象を最初は持つ。
遠征隊を殺し、母の創った自分のコピーを奴隷にし、シモンを利用して父の創ったアクソンを倒した。
ヴェルソの墓の前では表情ひとつ変えなかった。
しかしクレアもルノワールと同じように、家族のために行動している人物だ。
アリシアの無邪気さに怒り、キャンバスにこもりきりになるアリーンに怒り、アリーンに構ってキャンバスから出てこられないルノワールに怒り、そうした家族への怒りを作家に向け、クレアは画家である家族の未来のため、外でひとりで戦っている。
「クレアはすごく完璧」とアリシアが話すくらい、クレアは非の打ち所がないのが当たり前だとされ、本人も常に完璧であることを自らに課していたように思う。
自分の創造物にも完全性を求め、少しでも弱さや不完全さのあるものは消さねばならないと考えていた。
誰よりもクレアを身近に見てきたヴェルソ(の魂)も、クレアの絵や彫刻はすべて完璧じゃないといけないと話している。
このあとヴェルソ少年は「俺は完璧じゃなかったけど」と言っているが、戦闘アビリティの名前が「パーフェクション(完璧)」でSランクを維持しないと話にならないあたり、ヴェルソも親から相当なプレッシャーを受けていたんじゃないかと思う。
おそらくクレアの完璧主義はアリーン譲り。
ヴェルソが死んで、家族が崩壊した中でも、ひとり悲しむ暇もなく作家との戦いを続けていたのは、長女として家族の責任を負うのが完璧を望むクレアには当たり前だったからなのかもしれない。
しかし完璧な人間などいるはずがない。
クレアの創った白いネヴロンは、自分たちが不完全だと認めていた。
「芸術は窓であり鏡」はルノワールの言葉だが、芸術が自己を映す鏡だとすれば、クレア自身もまた、自分が不完全であることを自覚しているはずだ。
ルノワールの創ったアクソンに象徴されるように、クレアは家族の重荷をひとりで背負っている。
家族が皆キャンバスにかかりっきりで頼れる者がいない中、弱さを見せることを許さず、不完全な姿を隠し続け、孤独を感じながらも、ひとりでやるべきことに集中しているのがクレアだ。
ヴェルソエンドでクレアが表情を変えないのも、悲しんでいないからでは決してなく、感情を表に出さないだけだ。
自分に厳しい反面、アリシアには冷たさの中に優しさも見せる。両親の面倒事に巻き込まれるな、あなたが人生を楽しむことが大事だ、といった妹へのアドバイスは惜しまない。
家族の重荷を背負うのも、ひとりでも作家と戦うのも、描かれた偽家族を決して家族扱いしないのも、クレアが家族を大切にしていることの表れ。
言葉よりも行動で愛を示す、それがクレアという人物なのだと考える。
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- 白いネヴロンの正体とジェストラルが戦い好きな理由
- マエルの悪夢と序盤キャンプイベントのニッチな深堀り
- 岩波の崖の祭壇やACT1クライマックスをじっくり見ていく
- 忘れ去られた戦場で描かれるキャラクターたちの心理
- モノコがいかにアレかという話や旧ルミエールのアクソン考察
- なぜシエルとルネはアクソンに屈しなかったのか
- モノリスのルノワール戦とペイントレス戦を振り返る
- エピローグの屋敷を散策し、姉妹の会話を振り返る
- リーチャーに込めたルノワールのアリシアへの希望
- 最終決戦でのマエルとルノワールの衝突、ヴェルソの決断
- 悲しみの受容へ。エンディング解釈と感想
その他:
- 冷たい完璧主義者に見えるクレアの本当の姿とは
- 旗とジャーナルでたどる遠征隊の足跡
Clair Obscur: Expedition 33 (Original Soundtrack)(新しいタブで開きます)