【Clair Obscur: Expedition 33】なぜシエルとルネはアクソンに屈しなかったのか(NG+プレイ記録7)
『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション33)』のニューゲーム+プレイ記録。
初見では気づかなかったあれこれを書いているので、ひと通りクリアしてストーリーを再確認したい方や、NG+プレイ中の独り言を読みたい方におすすめです。
今回の内容はヴィサージュとシレーヌについて、個人的な解釈を多めに書いている。
ストーリー全域のネタバレあり。
前回:モノコがいかにアレかという話や旧ルミエールのアクソン考察
ヴィサージュはどんな島か
アクソンの1体を倒すためにヴィサージュへ。
アクソンは、本物のルノワールがアリーン、クレア、ヴェルソ、アリシアをイメージして創造したもので、ヴィサージュにいるのはヴェルソをモデルにしたアクソンだ。
ヴィサージュでは、ルノワールによるヴェルソの解釈を見ることができる。
「嘘で真実を守りし者」
喜びの仮面「この世界を描いた男、掴めなかったものを求め、愛する者たちとの共有を願う。その笑顔に隠されたものとは?」
悲しみの仮面「はざまに生きる男、覆いの下で、感情は膨れ上がる。描くことを強要された人生では、彼はただの反映。」
怒りの仮面「運命を切り開けない男、渋面の下で、感情は燃え上がる。だが陰では、その憤りは薄れゆく。」
ヴィサージュで語られる言葉は、すべてヴェルソに関するものだ。
なお、ヴィサージュの商人いわく、遠い昔はこの島で暮らそうとする人間もいたが、地震のあと景色が一変し、人間が島からいなくなったとのこと。
このことから、アリーンがキャンバスに来て人間をつくってから、ルノワールがやってきて崩壊が起きるまでに、それなりの年数があったと考えられる。
崩壊は67年前だが、ヴェルソは自分の年齢を約100歳だと言っているので、33年くらいなのだろうか。
「嘘で真実を守りし者」とは?
では、「嘘で真実を守りし者」とは何なのだろう。
ヴェルソはたしかに真実を隠して遠征隊に嘘をつくことがしばしばあるが、ルノワールは生きていたころのヴェルソをもとにアクソンをつくったはず。
現実世界のヴェルソは家族にどんな嘘をついていたのか。
思い当たるのは、音楽への情熱を隠して画家を目指したことだ。
周囲は当然ヴェルソが画家になると考えていただろうし、両親(たぶん特にアリーン)はヴェルソが偉大な画家になることを期待していただろう。
ただ、屋敷で見つかるジャーナル不明に、「自分と鑑賞者の間に常に仮面があると、真の芸術家にはなれないだろう」と記されていることから、ルノワールはヴェルソが心からやりたいことをやっていないのを察していたと推測できる。
(上の画像はアップデート前のスクリーンショットで、「自分と鑑賞者の間に常に仮面がなければ、真の芸術家にはなれないだろう」という、実際とは真逆の訳になっている。ちなみに、英語とフランス語では文頭に「息子よ」とあり、父から息子への言葉であることが明確になっている)
ルノワールは、ヴェルソが本音を隠していることを知っていたし、そのことがヴェルソの芸術家としての才能や将来に影響を及ぼすと考えていた。
仮面で真実を隠すアクソンは、ヴェルソの心の声がヴェルソのものではなく、親の声で芸術と関わっていることを再現しているのではないかと思う。
別の見方としては、目の前にいるヴェルソはアリーンの創造物、アクソンで表現されたヴェルソはルノワールの創造物なので、ヴェルソという存在そのものが嘘で、この世界も本物のヴェルソも本当は存在しないという真実を隠している…という意味も考えられるが、ヴィサージュの消えゆく男の話を聞いた感じではこれはないかなと思う。
さらに妄想を広げると、この仮面で覆われた島は、創造主であるルノワールの仮面も映し出しているように見える。
消えゆく男は、罪のないヴェルソが画家と作家の争いの犠牲になったことを深く嘆いている。
男の言葉の端々から、ルノワールは原因が自分にもあると考えていると読み取れる。
加えて、ルノワールは火事のとき屋敷にいなかったらしいことがモノリスでの会話で分かるが、その場にいられなかったこともルノワールに追い打ちをかけている可能性がある。
自分が傲慢でなければ息子は救えたかもしれない、できることなら自分が死んで息子に生きてほしかった。そんな激しい後悔がヴィサージュを生み出したのだろう。
ルノワールはこれ以上家族の犠牲を出すまいとキャンバスで奮闘しているが、その下には息子を失った底知れぬ悲しみと後悔が隠れている。
シエルはなぜアクソンの攻撃が効かなかったのか
ヴィサージュのボス戦後、仮面の守護者は遠征隊に仮面を強要する。
ヴェルソ、マエル、ルネが仮面に苦しむ中、シエルには仮面の攻撃が効かなかった。
(モノコはすでに仮面があるから効かないのか、それとも犬だから効かないのか?)
1周目では何が起きたかまったく分からず、2周目でもよく分からなかったが…
よく見ると、シエルが持っているのは悲しみの仮面だ。
「仮面の下はどうなっているのか」「私たちにはみな仮面が必要」と仮面の守護者は主張するが、仮面とはつまり他人に見せたくないものを見せないものであったり、見たくない自分を見ないためのもの。
ヴェルソは音楽への情熱を隠し、ルネは両親の期待に応えるため本当の自分を隠し、マエルは悲しみに向き合わないようにしている。
(マエルに関しては、マエルという存在そのものがアリシアの仮面のようなものとも言える)
一方で、普段は前向きで楽観的で明るく振る舞うシエルは、死んだ夫のことを片時も忘れていないし、今でも思い出すとつらいと自覚している。
シエルに悲しみを隠す仮面は必要ない。
シエルはすでに悲しみと向き合っていて、悲しみはシエルの一部になっている。
だから仮面でシエルを傷つけることはできない。
そういうことなのかなと思った。
シレーヌの驚異をもてあそぶ者
続いてシレーヌへ。
シレーヌは、驚異をもてあそぶ者というアクソンで、アリーンをモデルにつくられたものだ。
人々の感情を操り、正気を失わせるシレーヌは、ギリシャ神話のセイレーンのように遠征隊を惑わせ、破滅させる。
ルノワールから見たアリーンの本質は、そういうものだったらしい。
ただ、ルノワールは他人を完全には理解できないことも承知している。
シレーヌの消えゆく男は、他人を真に知ること、および自分自身を真に知ることは到達できない答えだと話す。
自分のことも、相手のことも、本心から見ようとしなかったものが存在するのだという。
自分が見ないふりをした自分の暗い性質のせいで、アリーンが離れていったのではないか。それはいつだったのだろうか。自分の向き合いたくない性質を理解し、同じようにアリーンのことも知ろうとしていたら、アリーンは離れなかったのではないか。
壮麗な建築と、美しい踊りと歌声に彩られた空間。その中で妻を思うルノワールの影は、深い苦悩に沈んでいる。
ルネはなぜシレーヌに屈しなかったのか
シレーヌのボス戦後、遠征隊が窮地に陥る。
シエルが仮面のアクソンに対処したのと対になるように、ここではルネがシレーヌに対処する。
これも1周目ではよく分からず、2周目でもよく分からず、正直なところ今回もはっきりとは分からない。
ただ、シレーヌは感情を操るアクソンなので、感情に流されず規則に従うことを徹底しているルネは冷静に動けたのではないかと思っている。
一般的に6歳で弟子入りするところ、ルネは4歳で両親に弟子入りしたという話なので、幼少期から論理的な行動を訓練されていたのだろう。
偽ルノワールの警告
キュレーターに結界を破る武器を作ってもらい、モノリスに行けるようになる。
ヴェルソがアリシアから手紙を受け取ったあと、ルノワールが姿を表す。
描かれたファミリーの望まない会合だ。
ルノワールがいろいろ言っているが、要するにアリーンがキャンバスにいるのを望む限り描かれた我々は存在し続けるが、ヴェルソがやろうとしていることは妹のアリシアだけでなく、マエルやルネやシエルを消すことだと警告している。
お前の目的のために、ほかの者たちに代償を払わせるのか? と、ルノワールはヴェルソがペイントレスのもとへ行くのを止めようとする。
しかし、ヴェルソの考えは変わらない。父親に背を向けてヴェルソは立ち去る。
のちに記憶が戻ったマエルは、「あの父さんは本物より悪者に描かれていた」と話すが、現実世界のルノワールとヴェルソもこうして意見の折り合いがつかず衝突したことがあったのだろうかと気になった。
続き

モノリスのルノワール戦とペイントレス戦を振り返る(NG+プレイ記録8)|エクスペディション33
『クレール・オブスキュール:エクスペディション33』NG+感想・考察
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- 白いネヴロンの正体とジェストラルが戦い好きな理由
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- 岩波の崖の祭壇やACT1クライマックスをじっくり見ていく
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- モノコがいかにアレかという話や旧ルミエールのアクソン考察
- なぜシエルとルネはアクソンに屈しなかったのか
- モノリスのルノワール戦とペイントレス戦を振り返る