ウィッチャー原作小説The Last Wishの内容と感想(未翻訳・英語版)


2019年8月現在、日本語にまだ翻訳されていないウィッチャーの短編小説『The Last Wish: Introducing the Witcher』(ポーランド語原作の英語版)を読み終わった。

本記事では小説およびゲームのネタバレをせず、

  • 『The Last Wish』とはどのような本か
  • どのような短編が収録されているのか
  • 本全体の感想
  • 洋書の難易度

を紹介する。

各短編のネタバレ含む詳細なあらすじと感想については、準備でき次第公開していく予定だ。

The Last Wish: Introducing the Witcher(Amazonのページ)



ウィッチャー短編小説『The Last Wish』について

『The Last Wish』はポーランドの作家、アンドレイ・サプコフスキによるウィッチャーシリーズ最初の短編集だ。

1993年にポーランドで出版され、2007年に英語版が出版されたほか、ヨーロッパ各国語に加えて韓国語と中国語にも翻訳されている。

時系列では『ウィッチャーI エルフの血脈』から始まるウィッチャーサーガ全5巻よりも前の出来事が書かれている。


ゲラルトとシリがなぜ運命で結ばれているのか、ゲラルトとイェネファーがどのようないきさつで恋人どうしになったのか、といった物語の根幹に関わるエピソードが収録されているので、日本語版もぜひ出してほしい。



収録されている7つの短編について

『The Last Wish』にはゲラルトを主人公とした7つの短編がおさめられている。以下、各短編を簡単に紹介する。


The Voice of Reason

メリテレ寺院で療養中のゲラルトを描いたエピソード。各チャプターの冒頭と一番最後に入っており、それぞれのエピソードを回想する形で話が展開する。


The Witcher

ゲラルトがヴィジマのフォルテスト王から依頼を受け、呪いでストリガに変えられてしまった王女を人間に戻す話。


A Grain of Truth

ゲラルトと愛馬ローチが森で死体を発見したのをきっかけに、獣に姿を変えられた男と出会う話。

前出の「The Witcher」とこの「A Grain of Truth」はゲーム版でいうウィッチャーへの依頼のような感じ。

登場人物が少ない代わりに、ゲラルトの人間性やウィッチャーという職業について細かく触れられている。

>>ウィッチャー短編小説「The Witcher」「A Grain of Truth」感想


The Lesser Evil

ゲラルトがブラビケンで旧知の魔法使いのもめごとに巻きこまれる話。なぜゲラルトが「ブラビケンの殺し屋」と呼ばれるようになったか、その由来が描かれている。

いいとも悪いとも言いがたい終わり方をする奥深いエピソードで、個人的には一番好きな作品。

>>ブラビケンの殺し屋の由来。ウィッチャー短編小説「The Lesser Evil」


A Question of Price

シントラのキャランセ女王が娘パヴェッタの結婚相手を選ぶ晩餐会を開く。キャランセはとある目的のためにゲラルトを晩餐会に同席させる。

キャランセはシリの祖母で、パヴェッタはシリの母親である。シリがゲラルトと運命で結ばれている理由が明らかになるのがこのエピソード。



The Edge of the World

ゲラルトと吟遊詩人ダンディリオンが知り合って間もないころ、ふたりで世界の端と呼ばれる地域を旅したときの話。人間とエルフの確執が語られる。

ダンディリオンは「The Voice of Reason」にも登場。メリテレ寺院で療養中のゲラルトに会いに来ている。


The Last Wish

精霊ジンの魔法によって瀕死となったダンディリオンを救うため、ゲラルトが女魔術師イェネファーに助けを求める話。

ゲラルトとイェネファーの出会いと、どのようにして恋人となったかが描かれる。

ゲーム版「ウィッチャー3ワイルドハント」のクエスト「最後の願い」で語られているあれこれに直結しているのがこの作品である。




『The Last Wish』全体的な感想

副題である「Introducing the Witcher」の名のとおり、ウィッチャーとはどんな職業で、ゲラルトとはどんな人物なのか、というウィッチャーの世界への導入にふさわしい内容だった。

固有の地名やモンスターの名前は出てくるものの、複雑な政治事情などは出てこないので『ウィッチャーI エルフの血脈』よりも断然読みやすい。

ゲーム版をやったことがあればウィッチャーの設定をより理解できるし、何よりゲラルトとシリの関係がどう始まったか分かるのは大きいと思う。想定外の経緯で私はけっこう驚いた。

また、短編集とは思えないくらい要素が盛りだくさんで密度が濃い。人間がバタバタ殺されたり町が壊滅の危機を迎えたりする暴力性がある一方で、呪いで怪物になった人間が愛の力で元に戻ったり、願いを3つ叶えてくれる精霊が登場したりと、おとぎ話のような神秘性もある。

ファンタジー小説としては文句なしに楽しめるし、私はゲームから入った人間なので、ゲラルトが関わる世界の幅広さを追体験できてとても満足できる本だった。

ウィッチャーのドラマ版が2019年中にNetflixで公開予定となっているので、それに合わせて『The Last Wish』が翻訳されることを願う。



『The Last Wish』英語版の難易度

今までに大人向けの洋書を何冊か読んだことがあるという立場で言うと、『The Last Wish』は身構えるほど難しくはなかった。

ハリー・ポッターよりは難しいかもしれないけれど、ゲーム・オブ・スローンズの原作である「氷と炎の歌」シリーズよりは間違いなく簡単。あれはチャプター1も終わらぬうちに挫折した。

ウィッチャー原作小説の一覧・ゲームとの違いを紹介」でも同じことを言っているが、日本語でも英語でもウィッチャーの小説版で難しく感じるのは主に固有名詞や設定なので、ゲームをプレイ済みであると難易度はかなり下がる。


ウィッチャー独自のモンスター名や地名は当然ながら辞書に載っていないので、たとえば「bruxa」という単語を見て「ブルクサってあれね。女の吸血鬼のモンスターね」とイメージできるだけでもだいぶ読みやすくなる。

英語版に挑戦してみたいけど難易度が分からないという方は、Amazonのページからkindleの無料サンプルを入手して試し読みしてみるといいだろう。