ウィッチャー短編小説「The Witcher」「A Grain of Truth」感想(英語版・未翻訳)


ウィッチャー原作小説『The Last Wish: Introducing the Witcher』には7つの短編が収録されている。

  • The Voice of Reason
  • The Witcher
  • A Grain of Truth
  • The Lesser Evil
  • A Question of Price
  • The Edge of the World
  • The Last Wish

【関連記事】ウィッチャー原作小説The Last Wishの内容と感想


本記事では上記のうち、「The Witcher」と「A Grain of Truth」のあらすじと感想をまとめている。

短編のネタバレを含んでいるが、この2作品はゲーム『ウィッチャー3 ワイルドハント』や小説『ウィッチャーI エルフの血脈』の核心に触れるような内容は書かれていないので、この記事を読んでも大して支障はないと思う。

人名・地名のカタカナ表記は、日本語版小説やゲームのものを参考にした。



「The Witcher」の内容

概要

ゲラルトがヴィジマのフォルテスト王から依頼を受け、呪いでストリガに変えられてしまった王女を人間に戻す話。

1つめの短編「The Voice of Reason」でゲラルトがメリテレ寺院にいるのは、このストリガとの戦いで重傷を負ったためである。


あらすじ

  • ゲラルトは報酬3,000オレンのストリガ退治のためヴィジマに行く。
  • 問題のストリガの正体は14年前にフォルテストとフォルテストの妹アダのあいだに生まれた不義の子。生まれてすぐ死んで城の墓に入れられたが、7年後にストリガとなった。それから7年間、ストリガは満月の夜に人間を殺していた。
  • フォルテストはストリガになった娘が人間に戻ることを望んでおり、ゲラルトにストリガを殺さないよう頼むが、呪いが解けなければ殺しても構わない、その代わり報酬は出さないと話す。
  • ゲラルトがストリガの住みかで待機していると、ノヴィグラドの有力者である男が現れ、ゲラルトにストリガ退治から手を引くようそそのかす。ストリガを放置してフォルテストの信用を失わせ、ヴィジマをノヴィグラドの統治下に置く狙いがあった。
  • ゲラルトは要求を断ってその男を縛り、ストリガをおびき寄せるためのエサにする。
  • ゲラルトはストリガとの戦いで大けがを負うが、ストリガの呪いを解き報酬を手に入れる。



「The Witcher」の感想

ゲームのウィッチャーへの依頼がそのまま文字になったような雰囲気。

小説のほうが先に存在していたので、正しくはゲームのウィッチャーへの依頼が小説の雰囲気を忠実に再現して作られている、だが。

ゲームをやったことのある人ならいたるところで「あーこれこれ」とウィッチャーらしさを感じることができるだろう。

まず、冒頭の数ページでゲラルトが酒場で絡んできた男3人を返り討ちにしている。剣を使うか拳を使うかの違いはあれど、屋内での乱闘はゲームでおなじみのシーンだ。

モンスター退治にあたっても、ゲラルトは事前にストリガの見た目や行動パターン、生存者について側近から細かく聞き取りして調査する。ゲームでもモンスターのもとに行く前にいろいろ調べまわったことを思い出す。

そしてストリガとの戦闘シーンでは、剣と印を駆使したゲラルトの戦いぶりが見られる。小説だけだと何の印が何の効果か分かりにくいが、ゲームをやったおかげで何となくイメージができた。

ウィッチャーは怪物退治を生業にするものだが、ゲラルトは事の背景にも関心を持ち、モンスターを救う必要があれば殺さないよう尽力するという、ゲラルトの仕事ぶりもよく表れていた。

短編集の最初の作品だけあって、ウィッチャーという職業、ゲラルトという人間、その世界を取り巻く重厚な設定を味わうのにぴったりな内容だった。

私はゲームは3作目のワイルドハントしかやっていないので詳しくは知らないが、ゲーム1作目にもフォルテスト王とその娘関連エピソードが出てくるらしい。




「A Grain of Truth」の内容

概要

タイトルを訳すと「一粒の真実」。

ゲラルトと愛馬ローチが森で死体を発見したのをきっかけに、獣に姿を変えられた男と出会う話。


あらすじ

  • 森でゲラルトとローチはモンスターに殺された人間の死体を発見する。
  • 被害者の来た道をたどると屋敷があり、そこには呪いで獣に姿を変えられたニヴェレンという男が住んでいた。
  • ニヴェレンはゲラルトをもてなしながら、12年前に女司祭を強姦して呪いをかけられたこと、若い美女が獣の男を人間の姿に戻すおとぎ話を思い出して多くの商人の娘と過ごしたが何も変化がなかったことなどを話す。
  • 現在ニヴェレンは水の精ヴェリーナと暮らしているが、ゲラルトはヴェリーナがモンスターだと見抜く。ニヴェレンはヴェリーナを愛しており、もう呪いは解けなくてもいいと思っていると明かす。
  • ゲラルトが屋敷を去るとローチが奇妙な動きを見せる。森の死体はヴェリーナによるもので、ヴェリーナの正体は吸血鬼ブルクサだと気づいてゲラルトは引き返す。
  • 屋敷で待ち構えていたヴェリーナと戦闘になる。ブルクサの力にゲラルトは苦戦するが、ニヴェレンが助けに入りヴェリーナに致命傷を負わせる。
  • ヴェリーナは死ぬ直前にテレパシーでニヴェレンに愛を告白し、真実の愛によってニヴェレンの呪いが解ける。



「A Grain of Truth」の感想

ゲームでおなじみ、ゲラルトの馬ローチ登場(何代目かは不明)。

人間の同伴者がいないため、ニヴェレンに会うまでのゲラルトはひたすらローチに話しかけることで小説を成り立たせている。このへんはシュールさが漂う。

死体の傷や所持品を細かく調べるところはゲームの雰囲気にそっくり。

被害者が持っていた請求書を見てどこから来たどんな人なのか推理したり、傷跡を見てキキモラかヴァイパーのしわざだろうと当たりをつけたりと、ゲラルトが長年のキャリアを人知れず発揮している姿を見られる。

ニヴェレンの、獣に姿を変えられた男性が真実の愛で人間に戻る話は「美女と野獣」を彷彿とさせる。

ただのおとぎ話と異なるのは、ニヴェレンを愛したのは人間の女性ではなく凶悪な吸血鬼だったこと。そしてふたりは幸せになることはなかったこと。

ニヴェレンはヴェリーナと一緒にいられるなら元の姿に戻れなくても構わないと言い、呪いが悪化して完全なモンスターとなったら迷わず殺してくれとゲラルトに頼んだ。

そんな彼が、愛するヴェリーナの死と引き替えに真実の愛を与えられ、人間に戻ったというのが何とも皮肉で悲しい結末だ。

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