ダンディリオンとの冒険。ウィッチャー短編小説「The Edge of the World」(英語版・未翻訳)


ウィッチャー原作小説『The Last Wish: Introducing the Witcher』には7つの短編が収録されている。

  • The Voice of Reason
  • The Witcher
  • A Grain of Truth
  • The Lesser Evil
  • A Question of Price
  • The Edge of the World
  • The Last Wish

【関連記事】ウィッチャー原作小説The Last Wishの内容と感想


本記事では「The Edge of the World」のあらすじと感想をまとめている。

あらすじでは短編の核心には触れないように概要を紹介し、そのあとに短編のネタバレを含む解説と感想を書いていく。

人名・地名のカタカナ表記は日本語版小説やゲームのものを参考にした。



「The Edge of the World」の内容

概要

タイトルを訳すと「世界の果て」。

ゲラルトがダンディリオンと知り合って間もないころに、世界の果てと呼ばれる地域を旅したときの話である。

人間とエルフの確執のほか、ダンディリオンの持っているリュートはどのように手に入ったかという(人によってはどうでもいい)逸話が記されている。


あらすじ

  • ゲラルトとダンディリオンはLower Posadaの農夫から、農作物を食べたり奪ったりする悪魔を殺さずに追い払ってほしいと依頼される。
  • 悪魔を倒してはいけないのは、村の予言者リリーがいかなる生き物も殺してはならないと指示していたから。
  • ゲラルトは悪魔の正体がシルヴァンというモンスターであること、シルヴァンがエルフの集団に村の作物を渡していたことを知る。
  • シルヴァンとの取引を知られたエルフのリーダーはゲラルトとダンディリオンの処刑を命じる。

これより先はあらすじに書かなかった短編の核心に触れていく。



「The Edge of the World」の解説・感想

物語の解説

本短編の舞台となっているのはドルブラサンナという地域で、「花の谷」や「世界の果て」とも呼ばれる場所。

ドルブラサンナはかつてエルフの居住地だったが、100年ほど前に人間が所有権を主張し、エルフは山のほうに追いやられた。

人間と共存したくないエルフは農業の知識がなく、飢えをしのぐためにモンスターを利用して人間の畑から農作物を奪うようになっていた、というのが物語の根幹となっている。

ドルブラサンナにある村のひとつ、Lower Posadaの農夫はモンスターを悪魔だと思い込み、ウィッチャーであるゲラルトを頼った。




登場人物の解説

ダンディリオン

ゲラルトの友人の吟遊詩人。仕事を探すゲラルトに同行する。

別の短編「The Voice of Reason」ではメリテレ寺院の巫女ネンネケに「役立たずの寄生虫」と形容されている。

リリー

Lower Posadaに住む少女であり予言者。村人に何も殺さないよう命じている。

シルヴァン(トルク)

村の農作物を奪っていた悪魔の正体はシルヴァンというモンスター。エルフたちはトルクと呼んでいた。

とても賢い生き物で、ゲラルトたちと普通に会話でき、ナゾナゾで勝負を仕掛ける。さらにエルフとはエルフ語で会話するバイリンガルモンスター。

基本的に悪意はないようで、エルフに殺されそうになるゲラルトとダンディリオンをかばっていた。

フィラヴァンドレル

山に逃げたドルブラサンナのエルフたちのリーダー。由緒のある家系のエルフで、人間をエルフより劣る生物と見なす。

シルヴァンに村の作物を盗ませていた張本人で、シルヴァンとの取引を知ったゲラルトとダンディリオンの処刑を命じる。

グウェントカードにいる。

トルヴィエル

フィラヴァンドレルの仲間のエルフ。ゲラルトとダンディリオンをつかまえ、ダンディリオンを罵倒して殴るだけでなくダンディリオンのリュートまで破壊したためゲラルトの怒りを買う。

ゲラルトは拘束されながらもトルヴィエルに頭突きを食らわせ鼻の骨をへし折った。ちなみにトルヴィエルは女性です。

ゲラルトとダンディリオンの処刑が中止になったあと、ダンディリオンに新しいリュートをあげた。

グウェントカードにいる。


長編小説にもスコイア=テルの一員として登場していたようだが、私はすっかり見落としていた。

ダナ・メービ

伝説の女神。すべてのエルフがひざまずくような存在。ゲラルトとダンディリオンの処刑寸前に現れる。


「黙れ」と言われてもしゃべるダンディリオン

これまでの短編ではゲラルトがひとりで淡々と活躍していたが、「The Edge of the World」ではダンディリオンというウィッチャー屈指のおしゃべりが加わったことで雰囲気が明るくなっている。

基本的にダンディリオンが冒険で活躍することはないのだが、ゲラルトに何度「黙れ」と言われてもしゃべってしまうところとか、モンスターの前でもエルフに取り囲まれたときでも口だけは達者に動くところとか、もはやうるさいを通り越していとおしさを感じる。

ゲラルトとダンディリオンの出会いはエイダーン。町の祭典でダンディリオンが女性関係のことで屈強な男たちに追われることになり、逃げるついでにゲラルトの旅に同行するようになった、と別の短編「The Voice of Reason」で書かれていた。

ゲームでもダンディリオンの色恋沙汰がいくつか出てきたが、ゲラルトと旅するきっかけすら女性関係のトラブルだったという意外性のなさ。

とはいえ、その後ずっとゲラルトとダンディリオンの付き合いが続いているところを見ると、性格は全然違ってもお互い居心地がいいのだろうなと思った。


先住民問題を想起させるドルブラサンナ

「The Edge of the World」はゲラルトとダンディリオンが世界の果てを旅した話であると同時に、先住民問題がちらつく話でもあった。

ドルブラサンナは長いあいだエルフの土地だったが、100年ほど前から人間が支配するようになる。ドルブラサンナのエルフはプライドが高かったため、人間とは共存せず山に身を潜めることを選んだ。

長編小説5巻『ウィッチャーⅤ 湖の貴婦人』では北方諸国とニルフガード帝国の戦争後、ドルブラサンナの扱いについて話し合いがなされる。


ドルブラサンナは自治領となり、人間とエルフには同等の権利が与えられるようになった。

あとから勝手に入ってきた人たちに土地を支配され、土着の民族が不当に扱われたり追いやられたりする。そして何十年もたったあとに権利回復の兆しが見える。オーストラリアやアメリカの先住民やアイヌのことが頭をよぎる内容だった。

The Last Wish: Introducing the Witcher(Amazonのページ)



『The Last Wish』関連記事