【ウィッチャー】舞台裏ポッドキャスト感想。綿密に作られたドラマ版ゲラルト


2020年1月8日に配信されたNetflixの音声コンテンツ「Behind The Scenes」の「The Witcher | Geralt of Rivia」を聞いたので、だいたい理解した範囲で内容をメモした。

時折、内容に関して調べたことを補足として挟んでいる。ドラマ第1話以外のネタバレなし。

「The Witcher | Geralt of Rivia」は主にスタッフのインタビューで構成されており、原作小説をどのように脚色していったか、ゲームや小説とは違うドラマ版のゲラルトをどのように作り上げていったかなどの舞台裏が語られる。

どれが誰の発言かまでは書いていないので、細部まで興味のある方はポッドキャストを聞いてみてください。

>>Behind The Scenes


原作や原作者のこと

  • 「ウィッチャー」はポーランド出身のアンドレイ・サプコフスキによる小説。
  • 最初の作品は1980年半ばに発表され、その後20カ国で翻訳され、ゲーム版も誕生した。

補足

アンドレイ・サプコフスキが初めてウィッチャーを書いたのは1985年。サプコフスキは当時38歳で、企業の営業担当だった。

コンテストに応募した短編「ウィッチャー」がポーランドのファンタジー小説コンテストの3位に入賞して評判になり、短編集『The Last Wish』や『Sword of Destiny』の出版に至った。

参考サイト:Meeting Andrzej Sapkowski, the writer who created The Witcher (EUROGAMER)


  • 製作責任者のひとり、トメック・バギンスキーはドラマ版ウィッチャーの制作にあたり、アンドレイ・サプコフスキに25ページに渡る手紙をメールで送った。
  • サプコフスキの返事は「It's interesting(面白そうですね)」の一言だった。

補足

トメック・バギンスキーはポーランド出身のイラストレーター、監督、プロデューサー(「ポーランド広報文化センター」のサイトではトマシュ・バギンスキという表記になっている)。

デジタルアニメーション制作で実績を積んだ後、監督業やプロデューサー業も行うようになった。

Netflix版の聖闘士星矢の監督がトメック・バギンスキーだということを知った瞬間、私は飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになった。

>>Netflix『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』S1感想と瞬の性別変更に思ったこと

密かに続きが配信されるのを待っているのだけど、いつになるのだろう(2020/01/24追記:パート2が配信されました)

参考サイト:Tomasz Baginski (IMDb)


脚色にあたって

  • アメリカの視聴者はゲームから「ウィッチャー」を知った人が多いが、ゲーム版をドラマにすることは考えなかった。
  • ゲーム版は小説をもとにして作られた翻案作品。翻案の翻案を作る意味はないし、ゲームはゲームとして完成されており、大成功している。
  • ドラマは小説、ゲームに続いてウィッチャーの世界とキャラクターを楽しめる3つめの媒体として作ることにした。

  • 「ウィッチャー」にはアンドレイ・サプコフスキの幼少期の経験が反映されている。
  • ポーランドは長い間ソ連とナチス・ドイツの戦場だった。そのため、抑圧され未来が見通せない状況の中でユーモアが育まれた。
  • ゲラルトが生死を分ける瞬間にも皮肉を込めたユーモアを言うのは、そういった文化の表れ。
  • アンドレイ・サプコフスキは営業担当として世界中をまわったが、その中で居場所のなさも経験した。

補足

ポーランドのざっくりした歴史は外務省の「わかる!国際情勢 Vol.22 ポーランドという国」が分かりやすい。


  • 「ウィッチャー」の原作は8冊の本であり、合計で3000 ページ以上のボリューム。
  • シリが重要なカギとなるのは3作目の『エルフの血脈』からだが、1~2作目の短編集もウィッチャーの世界を広げる重要な要素である。
  • しかし短編はゲラルト中心に書かれているため、ドラマでは大きな改変をした。ゲラルト、イェネファー、シリの物語を違う時間軸で同時に描くことだ。
  • ドラマ内での時間の流れはイェネファー=70年以上、ゲラルト=20年以上、シリ=2週間。
  • 他人との関係や交流は人を変える。ゲラルト、イェネファー、シリがどんな人なのかを、彼らが出会う前に見せたかった。

補足

ウィッチャーの小説一覧はこちら。

>>ウィッチャー原作小説の一覧・ゲームとの違いを紹介



ドラマ版ゲラルトへのこだわり

  • ドラマの1話目では、ウィッチャーがモンスター退治を生業にする変異体だと紹介する必要がある。そのため、原作にはないキキモラとの戦闘シーンを入れた(補足:原作ではゲラルトがキキモラを倒した状態から始まる)。
  • 戦闘コーディネーターは『ゲーム・オブ・スローンズ』で夜の王を演じたウラジミール・ファーディック。
  • キキモラは現実には存在しない、体長3メートルのクモ型のモンスター。8本の長いパイプを買い、スタントに動かしてもらってキキモラがどう動き、それに対してゲラルトがどう反応するかを1カ月かけて考えた。
  • ゲラルトは怪物退治のプロなのでキキモラの動きを予測できる。

  • ゲラルト役のヘンリー・カヴィルはスタントを使っていない。戦闘シーンや水中シーン、手しか映っていないシーンも全てヘンリー・カヴィルが演じている。安全面の都合上、普通はそんなことしない。
  • ゲラルトという人物になりきる上で、モンスターを倒す動きは大事な要素。全て本人が演じることは大いに意味がある。
  • ヘンリー・カヴィルがセリフを読んだ時「ゲラルトだ」と思った。ゲラルトらしい薄ら笑いやダークユーモアが見事に表現されていた。

  • ゲラルトはプロフェッショナルなので、剣は一流のものを選んでいるはず。
  • 武器制作担当はゲラルトの武器を作るためハンガリー国立博物館に行き、スラブ式の装飾を研究した。

  • 100年近くウィッチャーをやっているゲラルトが、これからどういう道を歩んでいくのか視聴者に伝える必要がある。ゲラルトの方向性を示すのに最適だったのがレンフリ。
  • 殺戮マシンとして創られた人間が人を殺すことでどう変わるのか、脚本チームでたくさん話し合った。レンフリを殺すことはゲラルトにとって正しい決断だったのか? 
  • ローレン・ヒスリック(制作・脚本担当)「ゲラルトはレンフリを殺したことを後悔していると思います。レンフリの死によって、なぜ殺すのかということをゲラルトは考えざるを得なくなったからです。ウィッチャーでいることの先にあるものは何なのか、それがシリとの出会いによって生まれる物語になります」

次のエピソードではイェネファーの舞台裏が語られる。

>>【ウィッチャー】舞台裏ポッドキャスト感想② ダンケルク構成、イェネファーの役作り

>>【ウィッチャー】舞台裏ポッドキャスト感想③ シリの役作り、驚きの法、晩餐会シーン

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