【ウィッチャー】シーズン2のおさらいと感想。ケィア・モルヘンに不満は残る

ウィッチャー シーズン2 感想

Netflixドラマ版『ウィッチャー』シーズン2の感想です。

シーズン1は1話ごとに感想を書いていましたが、シーズン2は感想ひとまとめ。

シーズン2はそこまで関心が持てなかったというか、ゲーム版をやり原作も読んだ身としては違和感のある要素がけっこうあって、シーズン1ほどは楽しめませんでした。

特にケィア・モルヘンあたりが…。

本記事ではシーズン2の簡単な振り返りと、よかったところ、不満を感じたところをまとめました。

※シーズン2のネタバレがあります

シーズン2のおさらい

シーズン2は時系列がシンプルな一方で、キャラクターと固有名詞がわんさか出てきて話がより複雑になりました。

ストーリーの大きな動きは、

  • シリの血筋か明かされたこと
  • シリを追う勢力がそろったこと
  • シリ、ゲラルト、イェネファーが一緒になったこと

の3つだと思います。

ここではシリの血筋とシリを追う勢力について、シーズン2で分かったことを簡単にまとめます。

シリの血筋

シリには途絶えたと思われていた古き血が流れています。

古き血はシリの先祖でエルフのララ・ドレンから女性の子孫に受け継がれてきたもの。

しかし、シリの祖母キャランセが古き血のことを隠していたため、シリはヴェセミルから古き血の花の話を聞くまで自分の血筋を知りませんでした。

シリを狙う勢力

シーズン2で多くの人物がシリを狙うことになります。

その大きな理由は、古き血が世界を変えるほど強大な力であるため、それぞれの勢力が自分たちの目的や思惑でシリの力を利用、あるいは排除したいと考えています。

また、シリはキャランセ女王亡きあとのシントラの後継者であるため、政治的にも重要な人物です。

シーズン2時点の各勢力は以下のとおり。

魔法協会と北方諸国

魔法協会と北方諸国はシリを世界の脅威と見なし、シリおよびシリを保護する者を賞金首とする。

魔法協会はヴィルゲフォルツとティサイアが取り仕切り、北方諸国のリーダーたちと協力している。

レダニア

シントラ侵略を目論むレダニアは、シントラの正統な後継者であるシリを求める。

レダニアのリーダーはヴィジミル2世だが、実際は相談役のディクストラと魔法使いのフィリッパ(シーズン2の大半は白フクロウ姿だった)が物事を進めている。

字幕だと表記がフィリパではなくフィリッパなのですね。

エルフ

フランチェスカ率いるエルフの集団は、古き血であるシリが預言者イスリンの言う救世主だと知る。

人間に土地を奪われたエルフは種族の繁栄と安寧のため行動する。

リディアとリエンス

炎の魔法使いリエンスは、リディアからシリをつかまえることを条件に牢獄から解放すると言われシリを追う。

リディアの雇い主とシリを狙う目的はシーズン2で明かされていない。

ニルフガード

ニルフガード皇帝のエムヒルは、国を挙げて実の娘であるシリを探している。

ワイルドハント

謎の多いワイルドハントも何らかの理由でシリを狙っている。

(シーズン2の「制作の舞台裏」で、ワイルドハントは何千年ものあいだ時間と世界の狭間にとらわれたエルフの戦士たちで、そこから脱出するためにシリの古き血の力を利用しようとしている、と説明がされている)


シーズン3では各勢力のシリ追跡が大きな見どころになるのではないかと思います。

シーズン2のよかったところ

シーズン2のよかった点は、ゲラルトとシリがつながりを強めていったこと、エムヒルが出てきたこと、ヤスキエルが相変わらずヤスキエルだったことです。

ゲラルトとシリのつながり

シーズン1の最終話で対面したゲラルトとシリ。

ただ運命でむすばれた相手というだけではなく、シーズン2ではそれ以上の存在としてお互いを認識していく姿がよかったです。

シーズン2でゲラルトはシリを娘だと話し、シリもまたゲラルトのことを初めて得た父親だと言います。

血はつながっていないけれど2人は家族である、そのことがはっきりと言葉に出ました。

小説でもゲームでも、2人の関係が家族だと断言するセリフはあまりなかったので、その点は分かりやすくなったと思います。

子を持てないウィッチャーのゲラルトと、父親のいないシリ。

お互い、親子関係というものは手探りです。

それでもゲラルトは何があってもシリを守ろうとするし、シリが生き残れるよう訓練もする。シントラの女王とか、古き血だとかではなく、自分の娘としてシリを思っている。

世界の異変がシリによって引き起こされていると知っても、シリのために行動を決意した。

シリもまた、強いゲラルトにあこがれ、祖母も教えてくれなかった真実を話してくれたゲラルトを信頼する。

世間ではウィッチャーは怪物だとか怖いとか言われていても、シリにしてみれば怪物はシントラを襲ったニルフガード軍のほう。

誰を信じ、どこを居場所とするか、シリはつらい経験を経て分かるようになった。

ゲラルトもシリも、血の繋がり以上に大切なものをお互いに見いだしています。

今後はその関係にイェネファーも加わるわけですが、シリを取り巻く過酷な運命を3人でどう乗り越えていくのか、注目したいです。

エムヒルの登場

シーズン2の最後にニルフガードのエムヒル皇帝本人が登場。

その正体はシリの父親であり、かつてゲラルトに命を救われたダニーだということが明らかになりました。

原作小説だとエムヒル皇帝=ダニーだと分かるのは全5巻の5巻目なので、ドラマ版ではかなり早い段階でエムヒルの正体を出したことになります。

ドラマという映像作品である以上、セリフだけでエムヒルを動かすのは難しいだろうし、すでに小説やゲームでエムヒルがシリの父親だというのを知っている人はたくさんいるので、エムヒル顔出しを早めたのは妥当だと思います。

エムヒル登場までの演出もよく、ヴォレス・メイアに取りつかれたシリを通してしっかり「この人がシリの父親ですよ」と視聴者に見せてくれたのは親切でした。ダニーの顔、完全に忘れていたので。

シリがゲラルトのもとへ帰る際、キャランセ、マウスサック、パヴェッタの体は灰になっていったのに対して、ダニーだけは変化が起きなかったのも、ダニーがまだ生きていることの暗示になっていてよかった。

エムヒルはゲーム版のイメージが強く、チャールズ・ダンスの威圧的な演技に比べるとドラマ版のエムヒルは少しやわらかい印象を受けましたが、それはそれで新鮮。

ドラマ版で今後気になるのは、シリがエムヒルと対面したときにどういう反応をするのかということ。

というのも、本来シリは両親の顔を覚えておらず、原作小説ではエムヒルに会ったときに実父だと分からなかったくらいなのですが(何かしら思うような描写はありましたが)、ドラマでは意識の中でパヴェッタとダニーの顔を見ているので、シリはエムヒルに会ったら自分の父親だと気づくはずです。

故郷シントラに攻め込み、大切な人を奪ったのが実の父だと知ったとき、シリは何を思い、何を言うのか。楽しみです。

ヤスキエルがヤスキエルだった

ドラマ版ウィッチャーは原作とは全然違うシーンが山盛りだったり、既存キャラクターに独自の出番がドカ盛りされていたりするのですが、ヤスキエルはシーズン2でもヤスキエルでした。

捕らえられていてもずっとしゃべり続けるところはもちろん、拷問されても友人の情報は守りとおすところがヤスキエルのいいところ。

自分を山に置き去りにした友のために、よくがんばった。

シーズン2のヤスキエルはまだ、ゲラルトがなぜシリを大切にするのかたぶんよく分からない状態です。

イェネファーがシリと接するうちに気持ちの変化が表れたように、ヤスキエルも今後、シリと交流してゲラルトに対してと同じくらいシリを大切に思うようになるのではないかと思います。

シーズン2の不満点

シーズン2の不満点は、細かく挙げるといろいろありますが、取り上げるのはエスケルとイェネファーのことです。

エスケルやケィア・モルヘンの扱い

やっぱり、2話のエスケルはなぜあんな扱いだったのかと言わざるをえない。

おそらくエスケルに関してはゲーム「ウィッチャー3」を遊んだ人特有の感想だと思います。

原作だとエスケルは死にはしないものの、出番自体はそれこそシリを訓練するくらいなので。

でもエスケルはゲラルトと同じくらいの時期にウィッチャーになって、ゲラルトとは兄弟同然に育ってきた間柄なわけです。

3話の回想でゲラルトとエスケルの仲が良かったことは分かるものの、シリに対する態度はひどいものだったし(あれはすでにレーシーに感染していたから、らしい)、生前のエスケルにいいイメージがないままだったのは悲しい。

それに、どんなに世界が変わりつつあるとはいえ、ウィッチャーとは不測の事態にあっさりやられてしまうものなのかと、ウィッチャーとはモンスター退治のプロではなかったのかと、そういう印象さえ抱く。

なぜ死ぬのがドラマ版で突然出てきた無名のウィッチャーではなくエスケルだったのかについて、脚本担当者いわく、「エスケルの死はゲラルトにとって、シリに何が起きているのかを一刻も早く突き止める動機付け」「何とかしないとシリやウィッチャーたちを失うと分かったから」ということだそう。

参考:The Witcher: Unlocked | FULL SPOILERS Season 2 Official After Show & Deleted Scenes | Netflix Geeked (YouTube)

ゲラルトはエスケルを自らの手で殺したことを一生引きずるだろうし、それが正しいことだったのか迷い続けるでしょう。

そしてエスケルの死はシリを守り抜くことへの強固な意志となり、ゲラルトが前に進むための原動力になったのは間違いありません。

ただ、いくら主要キャラと親しい人物の死が大きな動機付けになるとはいえ、脇役のストレゴボルやイストレドやフィラヴァンドレルが原作以上の出番を得ている一方で、エスケルやマウスサックが原作にはない死亡シーンを与えられるのは何だかなあと思ってしまうのです。

(イストレドの出番が増えたのは分かるよ… イェネファーの元恋人という設定を利用しない手はないもの。ちなみにイストレドが原作で登場するのは短編集2)

でも、調べたらエスケルが死ぬっぽいことは2021年2月のネット記事にすでに書かれていたので、今さら驚く話でもないのかもしれない。

参考:Spoiler report: Netflix to make big changes to Eskel’s role in The Witcher - REDANIAN INTELLIGENCE

まあエスケルはそれでいいとして、私はケィア・モルヘンについてどうしても納得できないことがある。

なんでケィア・モルヘンに娼婦が何人も来るの? ケィア・モルヘンって人に知られていない場所じゃなかったっけ(リエンスはあっさり来ていたが)。ていうかあのレーシー騒ぎの中あのおねーさんたちは凍死せずちゃんと帰れたの??

シーズン2はセクシーなシーンがないから無理やり入れたのではないかと疑ってしまう。

もう1つ残念な点を挙げると、身なりがきれいなトリスを見ておめかししてみたシリに対してのランバートたちの態度が無神経すぎる。皮肉屋のランバートでさえ原作ではもっと純粋に驚いた反応をしていて、それがおもしろかったのに。

ということで、私が原作びいきなのもあってケィア・モルヘン関連は総じて不満でした。

イェネファーとシリの出会い方

イェネファーがシリと出会うきっかけは、イェネファーが魔力を取り戻すためにシリをヴォレス・メイアに引き渡すことでした。

(原作だと、シリの不思議な力がトリスでは手には負えなくなってイェネファーをケィア・モルヘンに呼んだ、という流れ。なお、イェネファーへの手紙にゲラルトはイェネファーのことを「友人」と書いており、そのことにイェネファーがカチンと来ていた。これが6話のメリテレ寺院でゲラルトがイェネファーを「友人」とシリに紹介したときの元ネタ)

シリがゲラルトの驚きの子だと知ってもなお、イェネファーはシリを利用しようとしていたのは残念な展開でした。

イェネファーはシリの母親的な存在になる人物です。

母が娘を裏切るのが母娘の初対面というのは、さすがに第一印象が悪すぎないだろうか。

おわりに

シーズン2は原作を読んだから複雑な話に何とかついて行ける一方で、原作を知っているからこそ違和感や不満を抱いてしまうことが多かったです。

ただ、シーズン2でシリの血筋が明らかになり、シリを追う勢力がそろい、ゲラルトとシリとイェネファーがそろったので、シーズン3からはまた楽しめるのではないかと期待しています。

シーズン2公開と同時期に原作の短編集1の日本語版がようやく発売されたのはうれしいニュース。

>> ウィッチャー短篇集1 最後の願い (ハヤカワ文庫FT)(Amazon)

(驚きの法のことやゲラルトとイェネファーの出会いのエピソードが入っている短編集。あとニヴェレンは原作のほうがいい人で、比べるとかなりおもしろい)

でも短編集は2のほうが個人的には好き。

>> ウィッチャー短篇集2 運命の剣 (ハヤカワ文庫FT)(Amazon)


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