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そしてケィア・モルヘンへ。ウィッチャー短編小説「Something More」感想(英語版)

2019/12/18

ウィッチャー(本) 読書

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※本記事は『ウィッチャー短篇集2 運命の剣』収録の「それ以上のもの」を英語版で読んだときの感想です(2022/03/27更新)

ウィッチャー原作小説の2作目『Sword of Destiny』に収録されている6つの短編小説のうち、最後の短編「Something More」のあらすじと感想をまとめた。

前回の「The Sword of Destiny」で別れたゲラルトとシリが再び運命で結びつく。

また、この短編はシリがケィア・モルヘンへ旅立つ直前のエピソードでもある。

本記事の内容は、下記ふたつの記事を先に読んでいると分かりやすいです(ドラマを見た方は②だけでもOK)

ゲラルトとシリの関係の始まり。ウィッチャー短編小説「A Question of Price」

シリとの出会い。ウィッチャー短編小説「The Sword of Destiny」感想



「Something More」のあらすじ

  • 荷車が動かなくなって立ち往生していた商人ユルガは、通りがかったゲラルトに助けを求める。ゲラルトは報酬に「帰宅して最初に見つけた予期しなかったもの」を要求する。モンスターが現れ、ゲラルトは勝利するものの重傷を負う。
  • 朦朧とした意識の中でゲラルトは、ヴェレティンの祭りで再会したイェネファーのこと、6歳になった驚きの子に会うためシントラのキャランセ女王を訪れた時のことを回想する。
  • ゲラルトは女魔術師ヴィセナの献身的な治療を受ける。彼女は幼いゲラルトをウィッチャーに捧げた女性だった。
  • ユルガとヤルーガ川に着いたゲラルトは、ヤルーガ川でダンディリオンと再会した時のことを思い出す。ゲラルトはシリを迎えにシントラへ向かっていたが、既にシントラはニルフガード軍に侵攻され、キャランセを始め女子供は皆殺しにされたと聞き、シントラへ行くのをあきらめた。
  • ソドンの家に帰宅したユルガは、妻から予期しなかった存在を知らされる。

この短編はゲラルトの回想をはさみながら展開していく構成になっており、イェネファー、キャランセ、ダンディリオンとの再会は回想シーンに該当する。ゲラルトが負傷していたり商人ユルガと行動していたりするのが現在進行形の話。

これより先はあらすじに書かなかったネタバレに触れつつ、解説や感想を書いていく。


ゲラルトはシリが6歳の時シントラに行っていた

前回の「The Sword of Destiny」でゲラルトはシリと初めて会った。

しかし実は、ゲラルトが驚きの法で約束したとおり、シリが6歳になる頃シントラを訪れていたことが今回判明する。

「A Question of Price」から6年後、ゲラルトはシントラのキャランセ女王と会う。

キャランセはパヴェッタとダニーの子を手放したくなく、マウスサックにゲラルトの暗殺を依頼していたほどだったが、パヴェッタとダニーが死んだことで運命の存在を信じるようになり、ゲラルトに子を渡す覚悟を決めていた。

キャランセの周りで10人の少年と1人の少女が遊んでおり、キャランセは「あの10人の中からお前の運命の子を選んで連れて行きなさい」とゲラルトに言う。

ゲラルトは「あの中にパヴェッタの息子はいない」と答え、運命の子の顔を見たかっただけで連れて行く気はないと断言し、シントラを去る。

10人の少年の中に1人だけいた少女というのが6歳になったシリだ。

当時ゲラルトはその少女が驚きの子だと認識していなかったが、顔は見ていたのだ。だから「The Sword of Destiny」で初対面のシリに見覚えがあった。

驚きの子は男の子だろうとゲラルトは思っていた。それでもその場にいた10人の少年の中に驚きの子がいないということを感じ取ったのは、シリとの運命がそれだけ強かったということなのだろう。

ゲラルトがキャランセに会うのはこれが最後になる。

数年後、ゲラルトはヴェレティンで再会したイェネファーに「シントラに急いで」と言われてシリを迎えに行こうとしたが、ダンディリオンからシントラはもうニルフガードによって壊滅したことを聞き、シリも死んだ可能性が高いと考えた。


ゲラルトの母親

ウィッチャーの作者アンドレイ・サプコフスキは、大事な情報をあえてハッキリ書かないことが多い。

代表的な例が「The Last Wish」で、ゲラルトの最後の願いが何だったのかは読み手の想像に委ねられている。

今回も、ゲラルトを治療したヴィセナという女魔術師がゲラルトの母親である、ということは明言されておらず、会話の内容でほのめかすだけにとどまっている。

私はしばらくヴィセナが何者か分からなかったが、さすがにヴィセナの「ゲラルトという名前はヴェセミルがつけたのではない」というセリフで察した。キャランセとの会話でゲラルトの母親の話が出ていたというのもある。

ここで私は「ん?」となった。魔術師は子を持てないのではなかったのか。

理由は説明されない。判明したのはゲラルトが魔術師の母から生まれたということと、ゲラルトは婚姻関係にない男性との望まない子だったためウィッチャーに託されたということだけだ。

イェネファーが不妊治療に固執するのは、ヴィセナのような前例があるからなのかもしれない。

ゲラルトが母親の話をイェネファーにしたとは思えないが、イェネファーはゲラルトの思考を探ることができるので、何かのタイミングでヴィセナのことを知った可能性はある。


シリにつながる二度目の驚きの法

商人ユルガは通りすがりのゲラルトに助けを求め、「お礼に望むものは何でも渡す」と言った。

そのためゲラルトは報酬として「帰宅して最初に見つけた予期しなかったもの」を要求する。「驚きの法」だ。

>>ゲラルトとシリをつないだ驚きの法とは。ウィッチャーの世界の習慣

最初こそユルガはどんな報酬を渡すことになるのかと不安がっていたが、ゲラルトにはモンスターから命を救ってくれた恩ができ、大いに感謝するようになる。

ソドンの家に着く前にユルガは「予期しないものが家にあるとは思えないから、代わりに息子の1人をウィッチャーの弟子にしてくれ」と言うが、ゲラルトもユルガがケガの手当をしてくれたことや自分をここまで運んでくれたことに感謝しており、礼はもう要らないと答える。

しかし、ユルガの家には予期せぬものがあった。

ユルガの妻がユルガの留守中、シントラのドルイドから戦争孤児の女の子を引き取っていたのだ。

シリである。

ゲラルトは再び驚きの法でシリと結びついた。

偶然にしてはできすぎという言葉があるが、ゲラルトとシリの場合、「偶然にしてはできすぎなのは運命だから」という一言で片づけられるほど、切っても切れない運命にあった。


「それ以上のもの」

この短編のキーフレーズは「2人の人間が結びつくためには、運命だけでは足りない。それ以上のものが必要だ」である。

シリはゲラルトとの再会に大喜びしながら「必ず私を見つけてくれると思ってた」「これからは一緒だよね?」と健気に言い、最後に「私はあなたの運命でしょ?」と問いかける。

それに対するゲラルトの答えは「君はそれ以上のものだ」だった。

「Something More」の最後の一文を飾ったセリフでもあるこの言葉は、運命を否定してきたゲラルトが運命を認め、シリと運命を超えた結びつきにあることを公言した瞬間だ。

「A Question of Price」から脈々と続いてきたゲラルトとシリのつながりが、ようやく1つに結びついたことになる。

ゲラルトとシリが再会するのは分かりきっていたことだが、この締めくくりには涙がちょちょぎれた。

そして話は長編小説へと続く。ゲームだと冒頭のケィア・モルヘンに続くイメージ。

アンドレイ サプコフスキ (著), 川野 靖子 (翻訳), 天沼 春樹 (翻訳)

さて、シリはゲラルトにとって何が「それ以上のもの」だったのか。

これも本では明言されていないので推測するしかないが、シリはゲラルトの生きる目的なのではないかと考えられる。

理由は「The Bound of Reason」で黄金のドラゴンがゲラルトに「いずれ君の生きる目的が見つかる」のようなことを言っていたからだ。

>>ゲラルトの不器用さと大義。ウィッチャー短編小説「The Bound of Reason」感想

自分の子ではないが限りなくそれに近いシリを、ウィッチャーとして育て上げることがゲラルトの当面の生きる糧になったのではないかと思う。

ただ、ゲラルトはシリが6歳の時は驚きの子をウィッチャーにする気はなく、後になって驚きの子を引き取りにシントラに向かったわけだが、何がきっかけで気が変わったのかは不明。

ヴェレティンでイェネファーに言われたからだろうか。

その頃のイェネファーはまだシリに会っていないものの、ゲラルトの頭の中を普段から探っているであろうイェネファーならばシリのことを知っていて当然だ。でもイェネファーがゲラルトをシントラに向かわせた意図はよく分からない。

とはいえ、いずれイェネファーにとってもシリは「それ以上のもの」になる。

シリの存在は、後の長編小説においてゲラルトとイェネファーを真に結びつける強力なかすがいになるからだ。恐ろしく完成度の高い因果関係に圧倒される。


おわりに

最後にくだらない感想。

『Sword of Destiny』全体を通して私が思ったことは、「ゲラルトはダンディリオンと偶然の再会をしすぎではないか?」だった。

「The Bound of Reason」ではドラゴン退治で閉鎖された橋で再会し、「Eternal Flame」ではパシフローラの前で再会し、そして「Something More」ではヤルーガ川で再会。

ゲラルトは6つの短編のうち3つでダンディリオンとバッタリ会っている。連絡手段が手紙という世界でそんな度重なる偶然あるだろうか、いやない。

そんなわけで、ゲラルトはシリだけでなくダンディリオンとも運命で結ばれているのではないかという疑惑が私の中で爆誕した。


以上で『Sword of Destiny』の感想は終わり。

Netflixのドラマ版に関する海外のネットニュースを読んだ感じだと、ドラマは原作小説をもとにしつつ話の流れや構成を大幅に変えているようだ。

小説との違いや、ゲラルトとシリの出会いがどのように描かれるのかが楽しみだ。

次の記事:【ウィッチャー】S1E1感想。シリ視点のシントラ脱出が新鮮

前の記事:シリとの出会い。ウィッチャー短編小説「The Sword of Destiny」感想

アンドレイ・サプコフスキ(著), 川野 靖子(翻訳)

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Seina

イギリス滞在経験あり。元フォワーダー業界勤務。吹奏楽経験者。英検1級取得者。ドラクエでひらがなを覚え、FFと青春を過ごしたゲーマー。

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