【THE LAST OF US】ドラマ史上最高傑作の予感。シーズン1第4~5話感想

実写版ラスアス感想 アイキャッチ

サバイバルアクションゲーム『The Last of Us(ラストオブアス)』の実写ドラマ『THE LAST OF US』の4~5話を見た感想。

危険なのは感染者だけではなく人間も、ということがよく分かるエピソードでした。

第5話は、シナリオも演技も構図も間合いも何から何までドラマ史上最高傑作じゃないかと思うくらいよかったです。

ネタバレあります。

4話の感想

4話はストーリー的には5話の序章。

とはいえ、エリーとジョエルが信頼関係を築くきっかけとなる要素がいくつかあり、何気に重要な回ではないかと思う。

人間どうしの戦いになり、エリーが初めて銃で人を撃ったこと(初めてではないが、エリーはまだそのことを話したがらない)、自分の不注意で若いエリーが人を撃つことになりジョエルが負い目を感じたこと、それについてジョエルが正直に謝ったこと。

ジョエルがエリーに銃の使い方を教えたことは、ジョエルがエリーを信用し始めた証。

そして…ダジャレ本!

エリーのしつこいダジャレでジョエルが笑顔を見せるのがとてもよい。

5話の感想:パート2っぽさ

スーパーボウルを避けるために前倒しで配信された第5話。

今までの人生で見たドラマをエピソード単位でランク付けするという企画があったら、この第5話はトップに推せる。そんな傑作回だった。

(しかし近いうちにトップがラスアスの別のエピソードに置き換わる気がしてならない)

5話は3話のように、ジョエルとエリー以外のキャラクターの心情や背景が丁寧に描かれる。

違う立場の人間それぞれが掘り下げられ、「そんな事情があったのか」と見る側の気持ちをコロコロ変えてくれて飽きない。

レジスタンス総出で追われるヘンリーを憐れむジョエルに、ヘンリーはそれはしかたのないことだと理由を説明する。

レジスタンスのリーダー、キャスリンが執拗にヘンリーを追う理由は、サムの白血病の薬を手に入れるためにヘンリーが当時のレジスタンスのリーダーであるキャスリンの兄を軍に売ったから。

弟のために危険を承知でジョエルと交渉するヘンリーを見たときは「なんて弟思いなんだヘンリー」と同情したのに、ヘンリーの事情を聞いて「なんてひどいことしたんだヘンリー」と気持ちが変わる。

そして、キャスリンが兄マイケルの思い出を語るのを聞いた途端に「気の毒なキャスリン」とキャスリンに同情してしまう。あれだけ残酷な仕打ちをする姿を見たにもかかわらず。

この感覚は『The Last of Us Part II』をプレイしたときに似ている。

「ヘンリーを許してマイケルは報われる?」と憤るキャスリンのやっていることは、マイケルのためと言いつつただの復讐だというところもパート2っぽいなと思った。

5話の感想:ゲームっぽさとドラマっぽさ

しばらくゲーム原作のドラマだということを忘れそうになっていたけれど、地下を抜けたあたりからゲームっぽさとドラマっぽさがうまく融合していた。

まず、狙撃手の家に単身乗り込むジョエル。この緊迫感よ。

ジョエルは狙撃手に対して何もしなければ殺さないと言ったが、狙撃手は要望を聞かず攻撃しようとしたのでジョエルに撃たれた。

このときのジョエルの表情には、4話での「罪のない人を殺した?」というエリーの言葉が反映しているように見える。

正当防衛だったとはいえ、この狙撃手は自分の仕事をしていただけで、逆の立場だったらジョエルも同じことをしたはず。

感染者ではなく人を容赦なく殺すことの倫理観を問うシーンだった。


その後、何となく存在がほのめかされていた感染者が地下から現れる。

ヘンリーがキャスリンに追い詰められ撃たれそうになった瞬間、大量の感染者が穴から出てくる光景は大迫力。

エリーを家の窓から援護するジョエルがウルトラかっこよすぎるほか、盛り上がってきたところに真打ち登場と言わんばかりに明らかにヤバいごつい感染者が登場したときは熱くなった。

味わい深い人間ドラマから突如パニック映画に様変わり。ボス登場シーンまでしっかり用意されている見事な作りで、ゲーム好きにもドラマ好きにもガツンと響く。

(あのボスっぽい感染者の名前すっかり忘れていたけど、ブローターね)

ブローターのヤバさはエリーもジョエルもしっかり目撃しており、いつか2人があのブローターと対決するのだろうと思うと楽しみですな。

そして感染者に襲われているヘンリーとサムをナイフで助けにいくエリー、それを的確に援護するジョエル。

この何がいいって、エリーとジョエルがちゃんと意思疎通していること(たぶん)。

目でお互いの意図をくみ取れる関係になっているのが感慨深い。

4話のダジャレや長距離移動でのコミュニケーションがあったからこそなのだろうな。

5話の感想:耐えて生きぬけ

ヘンリーとサムの結末は、ゲームのとおり。

何が起きるのか知っていてもつらいし、ドラマだと4人の関係が深まっているのがよく分かるのでなおさらつらい。

あれだけ不信感を顔に出していたジョエルでさえ、ヘンリーをワイオミングに誘うまでになったわけで。

そんなヘンリー、弟を守るために仲間を裏切り命を賭けて逃げてきたのに、自分の手で、しかも初めて人を殺したというのがその弟って。ヘンリーの気持ちなど想像もつかない。

ヘンリーが自らを撃ったときのエリーの表情に私も泣いた。


ヘンリーとサムを埋葬したときの、エリーの「I'm sorry」のメモ。

もっと早く感染者から助けられなかったことなのか、自分の血が何の役にも立たなかったことなのか、力強く約束したのに一緒に起きてあげられなかったことなのか。

でもあんな大変な目にあった日に完徹は無理だよ、エリーは悪くないよと言ってあげたい。

4話での「世界に絶望してるならなぜ進むの?」という言葉が今になって刺さる。

エリーは救える命を救うため、一刻も早く目的地に着きたいと思うようになったのではないか。

怖いのは人間か、感染者か

怖いのは人間よりも感染者、4話と5話はそれを如実に表すエピソードだった。

しかし同時に、群れをなす感染者の中では、個人の感情など何の意味も持たず無力であるという厳しい現実を突きつけられたようにも思う。

サムをここまで守り抜いたヘンリーの思いや命は、サムが感染したことで無に帰する。ジョエルとヘンリーが築いた信頼、エリーとサムが築いた友情も。

キャスリンも、騒乱の中でヘンリーを逃がすまいと銃を向けたものの、小柄な感染者にあっけなく復讐の機会を奪われる。

キャスリンがヘンリーに「世界はサムを中心に回ってるの? 弟の価値って何にも勝るの? 運命に逆らうからこんなことになる」と言っていたけど、人間の手に負えない事態においてはそれすら無意味なことなのだ。

(このセリフの役割はどちらかというと、何を犠牲にしてでも大切なものを守るという、作品のテーマを示唆しているのだろうけど)

復讐で憎しみや死が連鎖していく人間社会も恐ろしいが、世界をそんな状況に陥らせたパンデミックの無情さも恐ろしい。

続き:【THE LAST OF US】それぞれの不安。シーズン1第6話感想


シーズン1感想

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