【ラストオブアス2】クリア後感想。エリーが復讐の旅で得たものは何か


PS4のゲーム「The Last of Us Part II(ラストオブアス2)」の感想です。

本記事はエリー編について、エリーはなぜ一貫しない態度だったのか、結局エリーが得たものは何だったのかなど、2周目をやりながら私が考えたり想像したりしたことを書きました。

※ストーリーのネタバレあり


ジョエルに奪われ与えられたエリーの人生の目的

自分の免疫でワクチンを作り世界中の人を救う、というのは14歳だったエリーの人生の目的だった。

しかしその目的はエリーが誰よりも信頼していたジョエルによって壊される。

ワクチンで助かったかもしれない多くの命が奪われたこと、ジョエルの決断がエリーの意志確認なしに下されたこと、そしてジョエルが自分にウソをつき続けていたこと。

19歳のエリーは病院での真実を知る。

ジョエルから真実を聞き出したエリーは大きなショックを受け、ジョエルに憎しみをぶつけジョエルとの親子同然の関係を終わりにした。

一方で、エリーにとってジョエルは大切な人だというのも事実。

エリーの価値を免疫の有無ではなくエリーそのものに見いだしてくれたのはジョエルだということもエリーには分かっていただろう。

しばらくジョエルを避けていたエリーは、病院のことは許せないけど許したいと思っているとジョエルに打ち明ける。

しかし、2人がこれから関係を修復していこうとしていた翌日、エリーがジョエルと一緒に映画を見ようと思っていた日、ジョエルは殺された。

エリーはアビーたちにジョエルを許す機会を奪われ、強い憎しみに支配される。

アビーたちにジョエルの味わった苦しみを味わわせてジョエルの死に報いることが、エリーの新たな人生の目的になった。

エリーの人生の目的はジョエルの身勝手さで奪われ、ジョエルの死によって再びエリーに与えられた。


エリーの復讐に迷いが生じる

ジョエルを殺したアビーたちを殺すため、エリーはディーナとシアトルへ向かった。

復讐する気満々だったエリーに変化が訪れるのはシアトル2日目。アビーの居場所を聞き出すためにノラを拷問した時だ。

アビーたちが元ファイアフライであり、ジョエルの死は5年前の病院での出来事が関係していると知ったことで、エリーの復讐心は揺れ始める。

5年前にジョエルがエリーを守るためにやったことで苦しんだ人がいた。

その報復でジョエルは殺された。

ジョエルは殺されても仕方ないことをしたが、そもそもエリーが免疫を持っていなければこんなことにはならなかった。

どれもこれもあたしのせいだ、という罪悪感をエリーは抱えるようになる。

アビーへの復讐はジョエルに報いるためのものだと当初エリーは考えていたが、実はそうではなく全ての発端は自分にあることをエリーはノラに会って思い知る。

復讐への迷いが生じたものの、憎しみは消えずエリーは復讐を続けるためノラを拷問して殺した。

アビーがジョエルにやったのと同じように、何度もノラを殴りつけて痛めつけて殺したことで、ジョエルの死に様が度々エリーの脳裏に浮かぶようになる。

憎しみがエリーを苦しめていく。

1周目ではコントローラーのボタンを押して拷問に荷担することが苦痛なだけだったけど、ノラとの会話をきっかけにエリーは復讐に疑問を感じながらも復讐にとらわれるようになったので、ノラ拷問はエリー編で1、2を争う重要シーンだと今は思う。


アビーの父親がワクチン開発者だったことの意義

アビー編の感想を書いていた時は、アビーの父親がエリーの手術の執刀医でワクチン開発者である必要性を感じていなかった。

が、考えを改めた。

ジョエル殺害の動機について、ノラが具体的に何をエリーに話したのかはゲームで描かれていない。

だが、アビーがジョエルを殺したのは父親の復讐のためだということをエリーは知らない可能性が高い。

劇場でアビーに銃を突きつけられたエリーは「治療法がないのはあたしのせい」と言っていた。

それに、もしアビーの父親が殺されたことを知っていたら「ジョエルはあたしを守るためにやったの」なんてことを言えるとは思えない。「知るか」と一蹴されて撃たれて即エンドクレジットである。

ということで、ノラがエリーに話したのはジョエルがワクチンを開発できる人物を殺したことだけであり、ジョエルがアビーの父親を殺したことは話していないと考えられる。

アビーの仲間たちの中にも、アビーの父親と親しかった者、アビーの父親がワクチン開発の希望だと考えていた者など様々な立場があり、それによってジョエル殺害への考え方に差があるだろう。

ノラが後者であれば、ノラにとってジョエルはアビーの父親の仇ではなくワクチン開発を阻止した人類の敵だ。エリーにアビーの父親のことを伝えなくても不思議ではない。

ジョエルがエリーを助けたことでワクチン開発が中止されただけでなく、二度とワクチンが作れなくなったという事実。

これは、ジョエルのやった取り返しのつかないことの報復でジョエルが殺され、そのジョエルの復讐のために自分も取り返しのつかないことをしている、とエリーに自覚させるのに十分な情報である。

5年前に人々の命を救えるなら死んでも構わないと思ったエリーは、メルを殺したことで故意ではないにしてもこれから生まれる子供の命を奪った。

ジェシーもエリーの復讐に協力して命を落とした。

取り返しのつかないことの積み重ねがエリーをどんどん追い詰める。

もしアビーの復讐が個人的な恨みだとノラから聞いていたら、エリーの復讐はもう少し憎しみ一辺倒で一貫性のあるものだったかもしれない。

そういう意味で、ジョエルに殺されたアビーの父親がワクチン開発者だという設定はとても重要なのだ。


大切な人より復讐を選んだエリー

宇宙を夢見るエリーと、高いところが苦手なアビー。

ジョエルにやせすぎと言われるほど華奢なエリーと、85キロ持ち上げたとオーウェンに自慢するほど筋骨隆々なアビー。

エリーとアビーは対照的な要素が多いが、一番大きな違いは大切な人と一緒にいるより復讐を選んだかどうかだろう。

アビーはレブと生きることを決め、もう戦わないと誓った。劇場でエリーを見逃したことで、オーウェンの復讐は終わったのだ。

対してエリーは、ディーナとJJとの平和な暮らしを捨ててアビーを追うことを選んだ。

おいもちゃんと過ごすエリーは1作目の時のようにおしゃべりでユーモアにあふれていた。そんなエリーの様子があっという間に消えるラスアスの残酷さ。

農場からサンタバーバラへ向かうエリーは、「なぜそこまでするのか?」と理解に苦しむほどアビーに固執している。

PTSDに苦しむエリーは、アビーが消えれば死んでいくジョエルのフラッシュバックに悩まされなくなると期待したのだろう。

中断していたエリーの人生の目的が、アビーを追うことで復活する。

しかし、エリーが本当にやりたいことはアビーを殺すことでもジョエルの復讐でもなかった。

ジョエルを許すことだ。


ラストシーンを見て思ったこと

アビーの息の根を止めるまで後一歩、というところでエリーはアビーを生かす。

最後の回想シーンでエリーが言った「一生許せないけど許したいとは思ってる」という言葉はジョエルに対してものだが、アビーに向けられたものでもある。

アビーに対しては許すというより見逃すという言葉のほうが適切なのだろうが、憎しみの対象であるアビーを手放すことでエリーは復讐から解放される。

同時にジョエルを許し、ジョエルの死とウソからも解放された。

ジェシー、左手の薬指と小指、ディーナとJJとの生活など、エリーが多くのものを失って得たのはジョエルへの許しと自由だ。

空っぽの農場に戻ったエリーは新たな人生への一歩を踏み出す。

免疫でワクチンを作って人々を救うとか、ジョエルを殺されたからアビーを殺すとか、そういった外部から与えられた人生の目的ではなく、これからエリーは自分で人生の目的を探す。

もしも神様がもう一度チャンスを与えたなら、きっとエリーはジョエルが生きているうちにジョエルを許すのだろう。

そう思いながら私は空き家の窓からエリーの旅立ちを見送った。


まとめ

エリー編は複雑ではっきりしないところもあるので、後になって考え方が変わることもあるかもしれませんが、以上がラストオブアス2の私の解釈です。

2周目をやってアビーについても少し考えが変わったところがあります。

が、アビー自体にあまり興味がわかずオーウェンとの思い出シーンとかスキップしたくらいなので、前回のクリア直後の勢いで書いた短絡的なアビー編の感想はそのままにしました。


憎しみから解放されたエリーが、今度こそ大切な人と平穏で好きなだけジョークを言い合える生活を手に入れられるといいなと思います。

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