国際関係を分析するツール。『サクッとわかる ビジネス教養 地政学』感想

2020/10/17

読書

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日本は海に囲まれた地形のため、外国との衝突がほとんどなかった。


しかし、世界に目を向ければ国どうしの争いは絶えないし、日本でも近年は中国や北朝鮮の脅威が増している。


なぜ国と国の衝突が起きるのか、それは国益最優先で領土や権力争いをする国があるから。


他国との関係性、国際社会での行動を地理的な条件をもとに考えるのが地政学で、地政学を学べば国の本音が見抜けるのだと、奥山真司氏の『サクッとわかる ビジネス教養 地政学』には書かれている。



ニュースで「地政学的には」という言葉をよく聞くなと思って読み始めたものだが、日本を取り巻く状況や国際問題の理解を深めてくれる本だった。


地図やイラスト多めのサクッと読めるライトな本と見せかけて、実は情報量がとんでもなく多い濃密な本というギャップも魅力。


本書は大まかにいうと、


  • 地政学の基本概念や用語
  • 地政学で見た日本と関係国との情勢
  • 地政学で見た大国アメリカ・ロシア・中国の行動と思惑
  • 地政学で見た中東・アジア・ヨーロッパ諸国の衝突の歴史や原因


が豊富な図解と共に分かりやすく解説されている。


また、日本と世界の主要な国際問題が網羅されており、北方領土がロシアから返還されない理由、日本の米軍基地の重要性、中国が執拗に尖閣諸島にこだわる理由、中東が政情不安定な理由、シリア内戦やアメリカとイランの対立の背景など、ニュースの理解が深まりそうな内容が多かった。


世界史の現代史にあたる部分も多いので、世界史を勉強中の学生にもおすすめできる。


本を読んで興味深かったのは、沖縄米軍基地と米海軍横須賀基地がいかに重要な拠点かという部分。


沖縄は拠点として大変すぐれていて、射程距離1万kmのミサイルを配備すれば世界の主要都市を狙えるし、配備されている兵器は最新鋭だし、基地設備も世界最高レベルなのだそう。


横須賀基地は、大型軍艦や空母の修理ができる世界最大級規模のドライドックを備えており、かつ太平洋やオセアニアの監視にも欠かせない貴重な拠点だという。


ところで私はフォワーダー業務をしていた頃、横須賀基地から船の修理用品をアメリカに送り返す手配をしたことがある。米軍関係の貨物って輸出入手続きが特例扱いなんですよね。税関検査は絶対にないし。


それはさておき。米軍にとって在日米軍基地が重要である一方、日本にとっても在日米軍は欠かせないものだというのも本を読むと分かってくる。


在日米軍は中国や北朝鮮に対する抑止力であるだけでなく、日本の石油ルートを守るという重大な役割を果たしている。


日本は原油の88%を中東からの輸入に頼っており、石油タンカーは海賊が出没するホルムズ海峡と中国軍が進出するマラッカ海峡を通って日本に到着する。


このルートを守っているのが米海軍であり、日本に石油が供給されて日本経済がまわるのは米軍のおかげなのだそう。


日本は本来自国で守らねばならないものをアメリカに業務委託している状況ということだ。


本書では、北朝鮮のミサイルは7分で着弾するのに日本で問題になっていないのは異常、アメリカ本土が同じ立場ならとっくに空爆しているレベルのリスク、という指摘もあった。


日本が遺憾砲だけ放って何もしないでいられるのは、米軍のおかげなのでしょう。


そして個人的に注目したいのはトルコ。


トルコはヨーロッパとの関係が深く、中東唯一のNATO加盟国だったものの、アメリカがIS掃討のためクルド人を支援したことからアメリカとの関係が悪化し、近年はロシアとの関係を深めているらしい。


トルコに興味があるのは大学の卒業旅行で行ったことがあるのと、イギリスでトルコ人とクルド人と話したことがあるという個人的な理由から。


トルコ人はエルドアン政権の独裁ぶりに心を痛めていて、クルド人は「自分はクルディスタン出身だ」と国際的には存在しない国を出身地として挙げていた。また、親族にクルド人がいるというトルコ人にも会ったことがある。


私が会ったことあるのはごくごくごくごく一部のトルコ人・クルド人に過ぎないが、地政学で分析される国の動向の裏には、表に出てこない国民ひとりひとりの人生があるということは忘れないでいたい。


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