【The Sinner -隠された理由-】シーズン1を見ていないのに見たS2感想

2020/01/28

ネットフリックス 海外ドラマ

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「子供が殺人犯になるドラマに『The Sinner』があるよ。マインドハンターが好きなら気に入ると思う」

と、マインドハンターのシーズン2を見てしばらく経った後に友人からおすすめされたので「The Sinner -隠された理由-」をNetflixで見てみた。

…シーズン2から。

Netflixで再生したら勝手にシーズン2(当時最新シーズン)から再生され、そのまま最後まで見てしまったのだ。

しかし特に支障なかったし、友人の言っていた子供が犯人になるのはシーズン2のことだったので結果オーライ。

「The Sinner -隠された理由-」シーズン2はどのようなドラマか、何が面白かったか、見ていて思ったことをまとめた。ネタバレは途中からあり。




最初に犯人が分かるドラマ

「The Sinner」は第1話で犯人が殺人を犯し、そこから警察が捜査を進めて犯行の動機や事実を探っていくドラマ。

シーズン2ではジュリアンという13歳の少年が両親と思われる女性と男性をモーテルで毒殺するところから始まる。

冒頭で犯人が分かるドラマといえば「古畑任三郎」があるが、「古畑任三郎」と違って「The Sinner」に登場する犯人はすぐに自供するのが特徴の1つ。

そしてもう1つの特徴は、犯人が罪を認めているにもかかわらず動機が謎に包まれていることだ。



どんどん明らかになる新事実

第1話ではジュリアンは警察にほとんど何も話さないので、動機どころか身元も不明で、見ている側も分からないことだらけ。

謎だらけの事件の秘密が8話かけて徐々に明かされていくのが作品の見どころで、特に最終話の衝撃たるや大変なものだった。

明かされていくのが事実だけではないのも面白いところで、登場人物たちの心の闇が半端じゃない。

表向きは何も悪さしていなさそうな人、平和そうな組織の実態がどんどん暴かれていくのが圧巻と同時にショッキングなので、心が折れている時には見ないほうがいいかもしれない。

以下、ネタバレを含めた感想。



ハリーがジュリアンに与えた影響

母親からの解放

周りの大人たちがどんどん後ろめたい事実を暴かれる中、犯人であるジュリアンは話が進むにつれて成長していくのが印象的だった。

殺人犯なのに成長するというのも不思議な言い方だが、モスウッドという狭いコミュニティで生まれ育ったジュリアンにとって、自分の起こした殺人事件は結果として外の世界を知るきっかけとなったのだ。

モスウッドの方針はジュリアンの母親ヴェラが決めているので、ジュリアンが13年間で得てきた知識や情報はヴェラが選んだものに限られる。

ジュリアンは学校にも行っていないので、モスウッド以外の人とは話したこともなく、モスウッド以外の価値観に触れたことがない。

ヴェラがジュリアンの人生に占める割合は10割だった。

幸か不幸かジュリアンは殺人を犯したことで初めてヴェラから離れ、初めてモスウッドの外の人と話し、視野を広げていくことになる。

特にハリー・アンブローズ刑事と話した影響は大きく、ジュリアンが初めてまともに会話した外の人がハリーだったのは幸運だったと言える。


ジュリアンに主体性を持たせたハリー

ハリーは子供の頃、心を病んだ母親の関心を引くために家を全焼させた。

その苦しみは消えず、そのことがあるから他人の苦しみにハリーは敏感で、何らかのトラウマを抱えているジュリアンを助けたいと願う。

ハリーのいいところは人と対等に接することだなと最初に感じたのは、ジュリアンにひげをのばす理由を聞かれた時の答え。

「気弱な顔をしているから、ひげがあれば力強く見えて敬意を払われるようになると思って」

要するにナメられないようにしているということを、実に素直で丁寧な表現で伝えている。

その後もハリーはジュリアンの質問に誠実に答え、子供の頃は養護施設に入っていたことを話すと、それまではヴェラの指示どおりの受け答えしかしなかったジュリアンが悪夢のことなどを話し始める。

「この人には話しても大丈夫」と自分で判断したのだ。

ハリーは分からないことは適当に答えず正直に分からないと言うし、都合の悪いことがあっても隠さず本当のことを伝える。こういったことも、ジュリアンが心を許した要因だろう。

ヴェラとは対照的である。

ジュリアンが刑事裁判にかけられることになった時、「これからどうなるの?」と不安になるジュリアンにヴェラは「大丈夫」「すぐに帰れる」など根拠のない言葉をかけたのに対し、ハリーは判決が出たら刑務所で何年過ごすことになるかを具体的に教えていたことが分かる。

ヴェラの言うことが正しいとは限らないとジュリアンが感じるようになったのは自然だ。


ジュリアンはヴェラに言われるがままワシントンへ逃亡して、裁判を受けずに生きることも可能だった。

しかしジュリアンが母親に逆らってケラーに戻ると主張したのは、自分の人生は自分で決めていいというハリーの助言があったからに他ならない。

ジュリアンはそれまで何事もヴェラにああしなさいこうしなさいと言われてきて、自分がどうしたいのかと聞かれることや、自分がどうしたいのかを考えることは初めてだったのだろう。

ハリーがジュリアンに与えた影響は大きい。


父親を知らないジュリアンは、ハリーと接するうちに「父親というのはこういう人かな」という漠然とした父親像を抱いたのではないかと見ていて思った。

ヴェラとハリーは互いに決して信用せず、時には憎しみも見せる間柄だった。

そんな険悪なふたりがジュリアンにとって母親と父親の役割であると考えると面白い。



マリンの不幸さ

ジュリアンと同じくらい物語の重要人物となっているのがマリン。

ケラー警察ヘザーの親友だったが、何年も前にモスウッドに行ってから消息不明だった。

ジュリアンの本当の母親はマリンであり、さらに最終話でジュリアンの父親が明らかになる過程はシーズン2で一番の衝撃だった。

「父親、お前だったのか!」と。第1話と最終話で180度印象が変わった瞬間。

マリンは不幸な子で、誰もマリンの望むようにマリンに接してくれなかったのが悲劇の始まりだったと思う。

マリンはただただ、安心して一緒にいられる家族がほしいだけだったのに。

母親には生まなきゃよかったと言われ、親友には違う方向で親密さを求められ、「家族だと思って」と言われた親友の家族からは思いも寄らぬ扱いを受ける。

身近な人のうち誰か1人でもマリンの望んだ接し方をしていれば結果は違ったのではと思うと切ない(でもそうなるとジュリアンが生まれなかったのか)。

母親らしいことを何もしないままジュリアンの元を去ったマリンが、家族が欲しいという理由だけでジュリアンを取り戻そうとしたのはいくらなんでも無茶だと思ったが、モスウッドを出てから10年くらい経ったのだっけ? その間にマリンが安心して一緒にいられる人を見つけられなかったと考えるとさらに悲しい。


ところで、事件の被害者のベスってすごく優しい人だよなと思った。

ジュリアンを取り戻したいマリンに危険を承知で協力したし、マリンの代わりにジュリアンに歌を歌ってあげてもいたので、ジュリアンにもすごく優しかったはず。

ジュリアンは、生まれた時からそばにいて親切だったベスを殺してしまったわけなので、その罪の意識はおそらく消えることなく一生つきまとうのだろう。もう1人の被害者アダムのことは知らんが。

ついでに、マリンを見ていてずっと「別の作品でも見たことある」と引っかかっていたのだが、「マインドハンター」のシーズン1に出てきたホールデンの恋人だった。



モスウッドは実在の組織なのか?

シーズン2を見終わって真っ先に調べたのはモスウッドが実在するのかどうかだったが、ネットの情報によるとモスウッドは架空の組織のようだ。

IndieWireのインタビューでショーランナーは「モスウッドはCult(カルト)ではなくCommune(共同体)」と主張している。

「モスウッドは神を崇めていないし、宗教的なリーダーもいないし、特定の信仰もない。深く自分を知るためのセラピーや心理学的要素があるだけ」なのだそう。

参考サイト:’The Sinner’ Boss Answers Burning Questions About Mosswood: ‘We Avoid the Word Cult’

でもドラマのTwitter公式アカウントが思いっきり「カルト」って言葉を使っていて笑った。



「シーズン2の教訓:お茶を飲むな、カルトに入るな、車でナイアガラ旅行するな」って。

シーズン2を見終わってすぐにシーズン1の1話だけ見たが、シーズン2からは想像もつかないハリーの一面が出てきて面食らっている。同じハリーとは思えん。


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