理系の頭の中が少し分かる『東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』


「文系の私に」「超わかりやすく」「数学を教えてください」と、数学苦手のド文系人間の私にグサグサと刺さるワードが書名の『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』を読んだ。


始めに結論を言うと、この本を読んだからといって急に数学ができるようになるわけではない。

しかし、今まさに数学を勉強している学生や、そういった子供がいるご両親は読んで損はないし、理系の人の思考回路が分からなくて困っている人にもおすすめしたくなる本だった。



本の内容

  • 数学がどのように日常の役に立つのか
  • 数学を学ぶと鍛えられる思考力について
  • 中学数学の目標について
  • 中学数学の代数(二次方程式)の解説
  • 中学数学の解析(関数)の解説
  • 中学数学の幾何(図形)の解説
  • 高校で習う微分・積分を先取り解説



読んだきっかけ

この本を手に取っている時点でバレバレだと思うが私は文系だ。いけないと思いつつ物事を感覚で決めることが多い。

一方、私の夫は大学で数学を専攻していた生粋の理系だ。何事も理屈で考え、明確な根拠を求める。

「夕飯に○○を食べよう」という結論だけでも夫からは理由がポンポン出てきて驚く。ちなみに私の決め方は「なんとなく」。

夫の考え方は、わりと直感でいろいろ決めてしまう私とは大きく異なる。その原因は数学が得意かどうかではないか? と思ったのだ。なんとなくだが。

ということで、この本を読めば私も理系の考え方が分かるかもしれない! しかも数学も学び直せるかもしれない! と軽く考えたのである。

もうひとつ、聞き手になっているのが文系のライターさんだからというのもこの本を選んだ理由だ。

数学を説明してくれるのは「数学が苦手な人にも数学に興味を持ってもらいたいと思っている東大の教授」で、この点も魅力的ではあるが、説明を聞くのは「数学が苦手で文系30年」のライターさんである。

数学の専門家が一方的に説明するのではなく、読者と同じように数学が得意でない人があいだに入ってくれることで、数学について書かれた本を読むハードルがぐっと下がる。



読んですぐに中学数学をマスターできるわけではないが

序盤で数学が社会で何の役に立つか、数学を学ぶとどのように思考力が鍛えられるのか、といった解説がされたあと、中学数学の要である代数、解析、幾何の3分野の説明に入る。

具体的には、

  • 代数=二次方程式
  • 解析=二次関数
  • 幾何=ピタゴラスの定理・円周角・相似

で、この3つが理解できれば中学数学はマスターしたも同然なのだそう。この本ではそれを5~6時間でおさえることを目標としている。

説明はとても具体的で分かりやすい。

例題は「ネコ専用の扉を作るために扉のサイズを算出する」や「暴飲暴食を続けたら体重がどう増えるか」など親近感を抱きやすいテーマだし、数式ひとつひとつの展開が丁寧に書かれているので、じっくり読んでいけば最難関の二次方程式も何となく理解できた気になる。

ただ、本当に数学を理解したいなら、本を読んだあとに練習問題をやって学んだことを定着させる必要があるなと思った。

実生活で数学を使わない人がいきなり中学数学をマスターできるほど世界は甘くないのである。

逆に、家に数学の教科書や問題集がある人なら、本を一読したあとに問題を解いてみれば一気に理解が深まるのではないだろうか。

そういう点では現役で数学を学ぶ学生や、数学を勉強中の子供がいる家庭には非常に有意義な本だ。

一応、本には「最短・最速で中学数学がマスターできてしまう」ため「まじめに勉強している中学生は、決して見ないでください」と書かれているが、中学生こそ読むべき本だと思う。

数学嫌いにならないためというのもあるが、「なぜ数学が生まれて、なぜ数学を学ぶのか」といった、教科書には載っていない大事なことにも触れられているからだ。




理系の頭の中がちょっと分かる

この本を読む大きなメリットは、理系の思考回路が垣間見えるところだと個人的には思っている(もちろん理系全員にあてはまるとは思っていない)。

まず、文系の人がよくイメージする「数学ができる人=頭がいい」の正体が分かる。

数学は思考力を満遍なく鍛えるのに最適な手段であり、数学を学ぶことで

  • 思考を積み重ねていく力
  • 自分の出した答えが正しいのか疑う力
  • 対局的に物事を見る力
  • 難題の解決策をひらめく力

などが身につくそうだ。

例えば思考を積み重ねる力については、日常生活では2~3段分しか考える必要がないのに対して、数学では複雑な問題を解くために10段くらい思考を積み重ねないといけないのだそう。「考える」という行為の次元が違いすぎて仰天。

なお、数学をがんばると国語の読解力も上がるのだそう。考えることが数式から文字に変わるだけだから、ということらしい。数学ができたらいいことしかない説。

そして代数、解析、幾何の各分野の解説でも、数学ができる人の思考回路を垣間見ることができる。

複雑で難しそうな数式を見たときに、規則性を探したり、シンプルな形に置き換えたり、すでにある知識が使えるところを探したりしているのだ。

それに関して思い出したのが、夫と回転寿司を食べたあと、いくらになるか計算してみようという話になったときのこと。

私は皿を色ごとに重ねて100円の皿が5枚、200円の皿が5枚、300円の皿が4枚だから合計は500+1000+1200=2700円、というように計算した。

対して夫はまず、100円と200円と300円の皿の組み合わせが4セットあることに着目。

(100+200+300)×4=2400で、これに余った100と200を足して2700円、というように算出した。

規則性にすばやく気づいて計算をシンプルにできるのは、数学で培った力なんだろうなあと感心した。



まとめ

『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』はこんな人におすすめだ。

  • 数学を勉強中の学生
  • 算数・数学を勉強中の子供が身近にいる人
  • 理系の考え方を知りたい人

この本を読んだだけで数学がすぐに得意になるとは限らないが、数学を学ぶメリットが分かり、数学への苦手意識が和らぐ可能性がある。現在進行形で数学を勉強している人なら読んで損はない内容だ。

数学ができなくても生活に支障はないという人でも、身近にいる理系の人と考え方が違いすぎて困っている文系の人がいたら読んでみてほしい。数学をとおして身につく思考力が理解でき、考え方が違うのは当然なのだと悟りを開けるはずだ。